フェアノールの息子たちの長兄。
フェアノールの息子たちの中では最も賢明な人物だったが、最後までフェアノールの誓言に縛られて非業を重ね、それで身を滅ぼすことになった。
元々マイズロスはフィンゴンの友人だったがヴァリノールの不和のため彼と疎遠になり、父フェアノールおよび兄弟たちと共にシルマリルを奪回するという誓言を立てて中つ国に帰還する。
ダゴール=ヌイン=ギリアスでフェアノールが死ぬと、マイズロスはモルゴスとの休戦交渉に応じる。
彼は十分に警戒していたものの、罠にかけられて人質となり、手枷を付けられてサンゴロドリムの絶壁に吊り下げられた。
そこをフィンゴンに助けられ、この一件によってフィンゴルフィン家とフェアノール家の不和は和らげられた。
生還したマイズロスはアングバンドからの襲撃に対して無防備なヒムリング山の周辺の土地に移って警戒を続け、以後その地はマイズロスの辺境国と呼ばれるようになった。
こうしてマイズロスは進んで危険な場所の防衛を引き受ける一方で、その後背地である東ベレリアンドを事実上手中に収める。
ダゴール・アグラレブではモルゴスの奇襲を見事に撃退し、フェアノールの息子たちの警戒が怠りないことを示す。
ダゴール・ブラゴルラハでアングバンドの包囲は破られ、辺境国は蹂躙されて弟たちは全員がその領土を追われたが、マイズロスだけはヒムリング山の砦を死守し、残党を糾合してモルゴスの伸長を辛うじて阻んだ。
マイズロスはこの上ない武勇をもって数々の勲をあげ、オーク共はかれを前にして逃げ出した。
サンゴロドリムで受けた責め苦以来、かれの精神は、白い火のように体内で燃え、あたかも死者の国から還ってきた者のようであったという。
やがてベレンとルーシエンのシルマリル探求の功業が彼らの元に伝わると、マイズロスはモルゴスが必ずしも難攻不落ではないことを知って希望を取り直す。
そこでマイズロスの連合と呼ばれる提唱を行い、モルゴスに敵対するすべての勢力を糾合してアングバンド攻略の連合軍を形成しようとした。
だがフェアノールの誓言が引き起こした禍のため、ドリアスとナルゴスロンドからはほとんど援助を得ることができなかった。
さらにマイズロスに臣従する東夷のウルファングの一族は、既にモルゴスに誘惑されてその間者となっていた。
とはいえひとまず全ベレリアンドの賛同を得たマイズロスは力試しを急ぎ、各地で一斉に蜂起してモルゴスの軍勢を北方から一掃。
そして全軍の糾合が完了すると、フィンゴンは西から、マイズロスは東からアングバンドを挟撃してモルゴスの全軍を粉砕する計画を立てた。
連合軍はゴンドリンの思いがけない参戦で士気を大いに高めたものの、ウルファングの息子ウルドールの奸計でマイズロスは出撃を遅滞させられてフィンゴンと合流するタイミングを逸する。
アングバンドの門前で分断された両軍は、モルゴスの解き放った主力部隊とウルファングの息子たちの裏切りによって逆に挟撃される形となり、決定的な大敗北を喫した。(ニアナイス・アルノイディアド)
その後シルマリルがドリアスのディオル・エルヒールの手に渡ったことが知られると、フェアノールの息子達はシルマリルを引き渡すよう書状を送り、これが拒否されるとケレゴルムに扇動されてドリアスを襲撃し、二度目の同族殺害が犯された。
この戦いでケレゴルム、クルフィン、カランシアが戦死し、また幼かったディオルの子エルレードとエルリーンはケレゴルムの召使の手で森に置き去りにされ行方不明になる。
マイズロスはこれを大いに悔やんだが、シルマリルがシリオンの港のエルウィングの手元にあることがわかると、再び誓言に突き動かされて三度目の同族殺害を起こす。
シリオンの港は劫掠され、アムロドとアムラスも戦死し、エルウィングはシルマリルと共に大海に身を投じた。
怒りの戦いでモルゴスが打倒されると、エオンウェはシルマリルに対する彼らの権利は度重なる同族殺害で失効したと述べ、ヴァリノールに戻ってヴァラールの裁きを受けるようマイズロスとマグロールに命じる。
二人とも誓言に倦み疲れ、マグロールはエオンウェの命令に従うことを望んだものの、マイズロスはそれでも誓言の成就を試みることを主張する。
マイズロスとマグロールは夜半にヴァリノールの軍勢の陣営を襲って見張りを殺し、保管されていたシルマリルを奪って逃げ去る。
だがエオンウェの言葉通り、シルマリルはもはや兄弟を正当な持ち主とは認めず、その身を焼いた。
これを悟ったマイズロスは苦悶と絶望のあまりシルマリルを抱いたまま大地の火の割れ目に我が身を投じて死んだ。
シルマリルとフェアノールの誓言により身を滅ぼしたが、ダゴール・アグラレブやダゴール・ブラゴルラハ、ニアナイス・アルノイディアドでの活躍はフェアノールの息子達の中でも最も強かったと推定して良いだろう。
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