第一紀 ダゴール・ブラゴルラハ -ロードオブザリング全史-

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ロードオブザリング
Glaurung | The One Wiki to Rule Them All | Fandomより引用

455年 ダゴール・ブラゴルラハ(俄に焰流るる合戦(Battle of Sudden Flame)、ベレリアンド第四の合戦)が起こる。

年始めの冬至の夜、サンゴロドリムから突如として火の川が流れ下ってアルド=ガレンを焼き尽くし、鉄山脈が噴火した。

火の川の奔流は多くの者を飲み込みながらドルソニオンの高地とエレド・ウェスリンにまで達して山腹の森に火事を起こし、混乱を引き起こした。

その後にグラウルングとバルログたち、そして夥しい数のオークの大軍が襲来し、アングバンドの包囲が打ち破られた。

グラウルングはその猛威によってロスランからマグロールの山間を突破し、小ゲリオンと大ゲリオンに挟まれたマグロールの領地を破壊しつくした。

これ以後、ベレリアンドにおいて戦いが完全に終息することはなかったが、この第四の合戦自体はモルゴス側の猛攻が次第に下火になった春の訪れと共に終わったと考えられている。

 

襲撃の矛先をまともに受けたドルソニオンを防衛していたアングロドとアイグノール(フィナルフィンの三男と四男)、そして彼らに仕えていた族長のブレゴラスを含むベオルの族の戦士たちの大多数が討ち死にした。

西側のシリオンの山道の近くで戦っていたブレゴラスの弟バラヒアはセレヒの沢地で包囲されていたフィンロドを多くの犠牲を払いつつ救出し、フィンロドはその謝礼として彼の一族が難渋した時には必ず助けるという誓いを立て、その証として自分の指輪をバラヒアに与えた(バラヒアの指輪)

バラヒアの指輪は後にアラゴルンが手にすることになる。映画でアラゴルンがつけていた指輪がそれである。

 

ヒスルムのフィンゴルフィンとフィンゴンの軍勢は、多くの犠牲を出しながらエイセル・シリオンの砦への退却を余儀なくされた。ハドルと彼の次男グンドールは主君フィンゴルフィンの後衛を守って討ち死にした。

東の辺境を防衛していたフェアノールの息子たちの内、ヒムラドのケレゴルムとクルフィンはアグロンの山道で敵に大きな損失を与えたものの敗北し、民と共にナルゴスロンドへ逃れた。

ロスランの平原を守備していたフェアノールの民の乗手たちと、ゲリオン川上流のマグロールの山間を守備していたマグロールもグラウルングとオークの襲撃を受けて敗北し、マグロールはヒムリング山のマイズロスの許に逃れた。

 

カランシアの領国であるサルゲリオンもオークの軍勢によって全土を荒らされ、オークはさらにゲリオン川を渡って東ベレリアンドのアムロドとアムラスの領土も蹂躙した。

カランシアは自分の民とアムロドとアムラスの民の残党を集めるとラムダルを越えて南へ逃れ、アモン・エレブに見張りを置きつつ、オッシリアンドの緑のエルフの助けも得て抵抗を続けた。

兄弟の中ではマイズロスのヒムリング山の砦だけが持ち堪え、彼の許にはドルソニオンや東の辺境から戦意を持って留まっていた者たちが集結した。マイズロスはオークがベレリアンドへ侵入しないよう、アグロンの山道を奪還した。

北方にいた灰色エルフの大多数はこの時南下してドリアスやナルゴスロンド、ファラスの港に避難し、またオッシリアンドや、その先のエリアドールの荒野へ逃れる者もいた。

中つ国の東にいた人間たち(東夷)にも、戦争と、アングバンドの包囲が破られたという噂が伝えられた。

アングバンドの解囲を受け、トゥアゴンが密かに使者たちをシリオンの河口とバラール島に送り、船を作らせてアマンへ向かわせるが、みな航海に失敗する。

 

456年 ベレリアンドの惨状と一連の敗北の知らせに逆上したフィンゴルフィンは単身アングバンドの城門まで乗馬ロハルロールで駆け、モルゴスを臆病者と罵って一騎討ちを挑んだ。

アンファウグリスの灰土の中を疾風の如く駆け抜ける彼を、狩人神オロメその人がやって来たと勘違いし、敵は驚き惑うて逃げまわった。

モルゴスは気乗りしなかったが、配下の諸将の手前応じざるを得なかった。彼は黒い鎧を纏い、大鉄槌グロンドと黒い盾を構えて決闘に臨んだ。

モルゴスは何度もフィンゴルフィンに打ちかかったがその度に素早く躱され、逆に7度斬りつけられ傷を負わされた。その度に苦痛の叫びを上げるモルゴスに、アングバンドの軍勢は狼狽するばかりであった。

 

しかしフィンゴルフィンは徐々に疲弊してゆき、モルゴスは盾を構えて迫った。三度王は粉砕されんとして膝を突き、三度立ち上がりボロボロになった盾と兜を上向けて立ち上がった。

しかし周囲の大地はグロンドが振り下ろされた際の、地面を劈いた穴や裂け目だらけであったため、彼は躓きモルゴスの足許に仰向けに倒れた。

モルゴスは好機とばかりに左足を敵の首にかけへし折った。しかし死の間際、フィンゴルフィンは死力を振り絞り、愛剣リンギルでモルゴスの足を深く突き刺した。そのためモルゴスの足からはドス黒い血が吹き出し、大地の穴を満たした。

 

こうしてノルドールの上級王、武勇に最も優れていたフィンゴルフィンは死んだ。モルゴスはエルフ王の亡骸を折って狼どもに与えようとしたが、鷲の王ソロンドールが飛来して顔を鉤爪で引っかき、フィンゴルフィンの遺体を運び去った。

戦争におけるモルゴスの勝利は大きかったが、彼自身が負った傷はこの後も癒えることはなく、モルゴスは以後片足を引き摺るようになり、顔にはソロンドールによって付けられた傷が痕となって残った。

アングバンドの城門での果たし合いをエルフたちはその悲しみの深さから歌にすることはせず、オークたちも誇りにはしなかった。

上級王の位は長男の長男フィンゴンが継承した。

 

456年 バラヒアの妻エメルディアに率いられたベオルの族の生き残りの女子供はドルソニオンを脱出し、ブレシルやドル=ローミンに逃れたが、バラヒア自身は息子のべレンと生き残っていた男たちと共にドルソニオンに踏みとどまった(ドルソニオンの無宿者たち)

 

457年 サウロンがトル・シリオンにあったフィンロドの要塞ミナス・ティリスを奪取する。そこを守っていたオロドレス(フィナルフィンの次男)はナルゴスロンドへ逃れた。

トル・シリオンはトル=イン=ガウアホス(巨狼の島)に改名される。巨狼や吸血蝙蝠、悪霊・死霊の類といった配下でそこを満たしたため、エルフ達にとって大きな脅威となった。

ここはモルゴスのための物見の塔となり、以後全てのものはサウロンに見られることなくこの谷間を通過することは不可能になった。

 

458年 ハルミア(ハレスの族の族長)とベレグ(ドリアスの国境警備隊長)がシリオンの山道から南下してきたオークの軍団を壊滅させる。

戦いで仲間とはぐれたフーリンとフオルはオークに包囲されたが、ウルモの加護によって立ち昇った川霧に救われて敵の目から逃れ、ソロンドールの大鷲によってゴンドリンへ運ばれ、トゥアゴンに迎えられる。

 

459年 フーリンとフオルはトゥアゴンに受け入れられ、ゴンドリンに一年近く滞在し、エルフから様々なことを学んだ。

だが二人は同族の元に戻ることを望むようになり、ゴンドリンの存在は秘密にすると誓い、トゥアゴンに別れを告げると、再び大鷲によって運ばれてドル=ローミンに戻った。

フーリンとフオルは誓いを守り、自分たちが約一年間どこで何をしていたのかは誰にも語らなかった。

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