第一紀 シルマリルの奪還 -ロードオブザリング全史-

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ロードオブザリング
Silmarils | The One Wiki to Rule Them All | Fandomより引用

466年 ベレンはルーシエンを探索行に同道させるわけにはいかないと考え、一人アンファウグリスまでやってきて別離の歌を歌う。

しかしフアンは再びルーシエンを背に乗せて彼に追いつく。この時フアンは二度目となる言葉を発し、もはやベレンとルーシエンの運命は一つであり、二人で共に難題に向かうべきであるとベレンに助言。

また自分とはドリアスで再会することになるだろうと予言し、二人と別れた。二人の宿命は一つに織り成されていることを悟ったベレンは、共に難題に臨むことを決心する。

 

ドラウグルイン(巨狼の祖)とスリングウェシル(吸血蝙蝠)の皮衣を被って変装した二人は、ついにアングバンドにたどり着き、門番である史上最強の狼、カルハロスと対峙した。

カルハロスは猟犬フアンに課せられた「天が下にかつて存在したこともない強大な狼と戦うまでは死なない」という運命を知ったモルゴスにより、ドラウグルインの血筋の中から仔狼を選び出され、手ずから生き餌で育てられた。

その結果、アングバンドのどの穴にも入れない巨体に成長し、モルゴスの火と苦悶と飢えがその中に入り込み、世界にまたとない恐ろしい怪物となった。

 

ベレンとルーシエンが城門までたどり着くとカルハロスはこれを怪しみ、止まるよう命じて中に入れようとしなかった。

だがマイアの血筋の力を発揮したルーシエンの力によってカルハロスを眠らせて城内に侵入し、地の底にあるモルゴスの玉座までたどり着いた。

ルーシエンは暗黒の王の視線にも怯まず自分の名を名乗り、吟遊詩人のように御前で歌を歌いましょうと申し出て、歌い出した。

 

そんな彼女の美しさをとくと目の当たりにしたモルゴスは、アマンから逃亡して以来、彼が考えたどんな企みよりも腹黒い下心を懐いた。しかし彼はその下心故にヘマをやらかす。

というのも彼女をしばらく自由に歌わせたまま、その美しさを眺めながら、自分の邪な思いに密かな喜びを覚えていたためである。

その時彼女は暗がりに身を移しそこから歌を歌った。ルーシエンの歌は限りなく美しく、分別を失わせる力があったため、モルゴスは彼女の姿を求めて視線を彷徨わせているうち、判断力が鈍ってきた。

モルゴス麾下の将たちも微睡み始め、モルゴスも眠気に襲われ頭を垂れた。そこへルーシエンが眠りの外套を投げかけ夢を注いだ。

ついにモルゴスは完全に眠りに落ち、玉座から転げ落ちそのまま床に突っ伏した。

 

モルゴスの鉄の王冠は転げて、彼の頭から外れた。ベレンは狼の外衣を脱ぎ捨てるとアングリストを用いてシルマリルを一つ切り取った。

そのときベレンの心に欲が出て、誓言以上のことを、即ちシルマリルを3つとも切り取ってやろうという考えが頭をもたげた。

しかし、これは残りのシルマリルの運命ではなく、アングリストの刃は折れ、その破片は眠りこけているモルゴスの頬に突き刺さった。

彼は呻き声を発し身じろぎした。その途端ベレンとルーシエンは恐怖に襲われ、城門まで一目散に逃げ出した。

 

恐怖に駆られて逃げた二人を門前で待ち受けていたのは、目を覚ましたカルハロスであった。

ベレンは聖なる光が怪物を怯ませることを期待して取り戻したシルマリルを突き出したものの、カルハロスは貪欲さに駆られてベレンの右手ごとシルマリルを噛み切って飲み込み、その光に焼かれて狂乱して走り去った。

ベレンとルーシエンは大鷲のソロンドールに救われてアングバンドから逃がれ、ドリアスの国境に帰り着いた。

ベレンはカルハロスの毒牙にやられて生死の境をさまよっていたが、ルーシエンの懸命の治療によってベレンは再び目を覚まし、二人はかつてのように春の森を逍遥した。

 

以来、ベレンはエアハミオン「隻手」の名で知られるようになった。シンゴルは難題の成就をベレンに問い質したが、ベレンは失った右手を掲げて「空手」を意味するカムロストを名乗り、これにシンゴルの心は和らげられた。

かくして難題の成就はなり、シンゴルは二人の仲を認めてその御前でベレンとルーシエンは婚約を果たした。

しかし、シルマリルを飲み込んで体内を焼かれ、狂乱したカルハロスがベレリアンドを襲った。

シルマリルの力がひそんだカルハロスの狂乱はアングバンドの滅亡以前にベレリアンドを襲ったあらゆる出来事の中でも最も恐ろしいものであったという。

カルハロスは魔法帯を突破してドリアスに入り込み、これを駆り立てるため狼狩りが組織された。狩りにはシンゴル王自身と、ベレグ、マブルング、旅から帰還したベレン、そして猟犬のフアンが参加し、一行はエスガルドゥインの川辺でカルハロスを発見した。

 

ここで運命に定められていた通り、フアンとカルハロスの決闘が行われた。

カルハロスは毒牙によってフアンと、シンゴルを庇ったベレンに致命傷を与えたが、最後はフアンとの闘いに敗れて倒された。最期にフアンは三度目となる口を利き、ベレンに別れを告げて死んだ。

マブルングがカルハロスの腹を裂くとほとんど焼き尽くされた腸の中に無傷のベレンの右手に包まれたシルマリルが発見された。

マブルングが取ろうとすると、もはやベレンの手は消失し、シルマリルだけが取り出された。

瀕死のベレンはシルマリルをシンゴルに捧げ、ここに真の難題の成就がなされた。ベレンはルーシエンにかき抱かれ、口づけされて息絶えた。

だがその時、ルーシエンは大海のかなたで自分を待っているよう、ベレンに告げていた。

 

467年 ベレンの霊魂は外なる海の岸辺に留まり、ルーシエンの霊魂はマンドスの館までやってきて、子らの悲嘆を歌にして歌ってマンドスの心を動かした。

それゆえ、二人はついにこの世の涯なる岸辺で再び相会った。マンドスはマンウェに相談し、マンウェは心の裡にイルーヴァタールの啓示を求めた。

 

ルーシエンはマンウェからベレンと別れてヴァリマールにこの世の終わりまで住むか、ベレンと同じく定命の存在となって彼と共に中つ国に戻るかの選択を与えられ、後者の運命を選んだ。

ルーシエンはエルフの運命である不死の命を捨て、ベレンと同じ死すべき運命に組み込まれることとなり、二人は束の間中つ国に蘇って夫婦として時を過ごすことになる。

この結果、全エルフの中で彼女のみが真の死を経ることになったのであった。しかし彼女の選択によって二つの種族は結ばれることとなるのである。

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