力の指輪の話

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ロードオブザリング
映画ロードオブザリングより引用

三つの指輪は、空の下なるエルフの王に、
七つの指輪は、岩の館やかたのドワーフの君に、
九つは、死すべき運命さだめの人の子に、
一つは、暗き御座みくらの冥王のため、
影横たわるモルドールの国に。
一つの指輪は、すべてを統べ、
一つの指輪は、すべてを見つけ、
一つの指輪は、すべてを捕らえて、
くらやみのなかにつなぎとめる。
影横たわるモルドールの国に。

 

物語の中心となる指輪について詳しく解説します。

指輪ができたのは中つ国第二紀の話。

中つ国に残っていたエルフは愛着のある中つ国の荒廃を嘆き、いずれ衰えゆくであろう彼らの美や力を保護するための手段を欲していました。

そこへ言葉巧みに近付いたのがサウロンで、非常に美しい姿を取って力と知識を伝えていきます。

サウロンの力と知識は非常に珍重され、殊にケレブリンボールを領主としたエレギオンにおいて歓迎されました。

そしてサウロンに教示を受けたエルフの金銀細工師たちの技がその絶頂に達した時に、彼らは力の指輪を鍛え始めます。

 

元来、力の指輪はエルフの願いである、中つ国の荒廃を癒し、美しく価値あるものを時の流れから保護するという目的のために作られました。

そのため全ての力の指輪には共通して、時による老いや衰えを遅延させ、またそのものが生来持っている力を高めるという効果がありました。

しかしそれは同時に、その者が抱いている願いや欲望をも強くするという危険性をはらんでおり、人間のような限りある命の者にとっては破滅的に危険なものにもなってしまいました。

 

まず最初に完成されたのが三つの指輪です。

風の指輪ヴィルヤ、水の指輪ネンヤ、火の指輪ナルヤはケレブリンボールが単独で作り上げたため、サウロンの手に触れられたことはなく、所持者が堕落することはありませんでした。

七つの指輪と九つの指輪はケレブリンボールを筆頭にしたエルフの職人集団、グワイス=イ=ミーアダインによって作られましたが、それらの指輪には協力したサウロンの悪しき意図が吹き込まれていました。

サウロンが手を加えた七つと九つの指輪は、使用者を彼の支配する「幽界」に引きずり込むことで、その姿を不可視にし、同時にその者が本来見ることのできない領域の物事を見られるようにするという力を併せ持つことになりました。

 

その後サウロンは密かにモルドールに舞い戻り、滅びの山で他の力の指輪全てを支配する一つの指輪を鍛えます。

エルフの作った指輪が非常に強力なものであったため、サウロンはそれらを支配できる力を得るために、自身の指輪に己の力の大部分を付与せざるを得ませんでした。

このため、一つの指輪は彼にとって有利なものであると同時に致命的な弱点ともなり得たのです。

しかしながら一つの指輪を奪われない限り心配は無用であり、指輪がサウロンの指の上にあるときこの世界における彼の力はこの上なく増大することとなります。

こうして第二紀におけるサウロンの力は、第一紀末のモルゴスを凌駕する程のものに至りました。

 

しかしサウロンが一つの指輪を完成させた瞬間、エルフ達は彼が何者であるかを知ることとなります。

そのため彼らは指輪を隠して、決して使用することはしませんでした。

サウロンはエルフ達の指輪を奪い取るために戦争を仕掛けます。

ケレブリンボールは捕らえられ、拷問にかけられた末に九つと七つの指輪の隠し場所は話してしまいますが、三つの指輪についてはありかを明かしませんでした。

三つの指輪のうちヴィルヤはギル=ガラドに、ネンヤはガラドリエルに、ナルヤはキーアダンに託されて分散して隠していたのです。

ギル=ガラドに託されたヴィルヤは最後の同盟の戦いの前にエルロンドに託されて、第三紀ではエルロンドが守護者になります。

そしてナルヤはガンダルフが中つ国に訪れた時、キーアダンからガンダルフに託されました。

 

一方サウロンに奪われた残りの指輪は七つの指輪がドワーフに、九つの指輪が人間に与えられます。

ドワーフは非常に頑強な種族で、外部からの影響をほとんど受け付けない性質を持っていたために、寿命が引き延ばされることも、サウロンの謀りを受けて影の存在であるナズグールに変えられてしまうこともありませんでした。

ドワーフたちはただ富を得る手段としてのみ指輪を使い、莫大な富を獲得します。

しかしいずれにせよそれはサウロンの悪意のこもった指輪であるために、ドワーフたちは飽くなき欲望に身を落としたり錯乱したりして、最後には富によって破滅することになります。

最終的には七つの指輪はすべてサウロンに奪われるか、龍の炎で焼かれて消滅します。

 

なお七つの指輪のうち、最後の一つについてのみ消息が明らかになっています。それはドゥリン三世が手にして以降長鬚族の王に継承されてきた指輪でした。

第三紀2770年、スマウグによってエレボールを逐われたスロールは、放浪の内に絶望し、この指輪を自分の息子のスライン二世に託したあと、自身は2790年にモリアに赴きアゾグに殺されてしまいます。

そして指輪を受け継いだスラインも次第に黄金への飢えに取り憑かれるようになり、エレボールを目指して旅立った途上、2845年に闇の森でサウロンの手先の追跡を受けて捕らえられ、ドル・グルドゥアに連行された上で指輪は取り上げられました。

 

九つの指輪を与えられたのは人間の偉大な王や妖術師達であり、指輪の力を使って大いなる権勢を得ます。

しかしやがては全員が遅かれ早かれ影の下に入って永遠に不可視の存在となり、サウロンに隷属する恐るべき指輪の幽鬼ナズグールと化しました。

九つの指輪はその後サウロン自身の手によって再び掌握されることとなります。

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