エダイン三家の話 -ハレスの族-

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ロードオブザリング
Brandir | Wiki J. R. R. Tolkien | Fandomより引用

エダインとは第一紀のベレリアンドに到来したエルフの友たる三家(ドルソニオンのベオルの族、ブレシルのハレスの族、ドル=ローミンのハドルの族)の人間のことを言います。

今回はハレスの族について詳しく見ていきます。

 

ベオルの族に次いでベレリアンドに到来したエダインの第二家系で「ブレシルの人間たち」とも呼ばれます。

森に住む民で、他の二つのエダインの氏族とは言葉も習俗も異質であり、中でも女の戦士が多くいることと、異人種であるドルーエダインと共に暮らすことで知られていました。

外見はベオルの族に似ていましたが、身長においては劣り、知識の吸収にもさほど熱心ではなかったようです。

力のある王侯に統治されることも同族が寄り集まって住むことも好まず、それぞれの家族ごとに散在して居住していました。

ベレリアンドに到来した当初はハラディンの族と呼ばれており、エレド・ルインを越えて最初に辿りついたオッシリアンドの地では緑のエルフたちに冷遇されたため、北上してサルゲリオンに定住します。

 

最初の指導者はハルダド。サルゲリオンに定住していた当時、ハラディンの族は世襲による族長を持たなかったようですが、オークの襲撃を受けた時は、必要に迫られてハルダドが防戦を指揮しました。

ハルダドは敵に突撃を仕掛けて討ち死にし、彼の遺体をオークから守ろうとして突出した息子ハルダールも討ち死にしてしまいますが、生き残った者たちは娘のハレスに統率され、カランシアの軍勢が到着するまで持ち堪えました。

ここからハレスの族という呼び名が始まります。

 

カランシアはハレスとその一族に敬意を表してもっと北の地に移住するならば彼らを庇護下に置くことを申し出ましたが、ハレスはそれを断り、自らが治める安全な土地と自由を求めて西へ移り住む道を選びます。

彼女たちは人間を快く思わないドリアスのシンゴル王が自国領とみなしているブレシルの森に到達。

そこでハレスの族の苦難を聞き及んだフィンロドがシンゴルを説得し、その結果シンゴルはブレシルの森に一人たりとオークを入れさせず、またエルダールの全ての敵からテイグリンの渡り瀬を防衛することを条件にハレスの族の居住を許しました。

ハレスは死ぬまでブレシルで過ごしますが、生涯独身であったため、族長の地位はハルダールの息子でハレスにとって甥にあたるハルダンが引き継ぎました。

 

ハルダンの死後は息子のハルミアが族長を引き継ぎます。

ハルミアはダゴール・ブラゴルラハの後、シリオンの山道からブレシルに侵入してきたオークの軍団をドリアスの国境警備隊長ベレグと共に壊滅させるなど活躍。

マイズロスの連合に参加して来るべき戦いに備えていましたが、ニアナイス・アルノイディアドの前に死去します。

族長位は息子のハルディアが引き継ぎ、娘のハレスはハドル家のガルドールと結婚し、フーリンとフオルの母となります。

ハルディアは当時の人間の慣習に従い、妹ハレスの子であるフーリンとフオルを養育しました。

 

ニアナイス・アルノイディアドでは、ハルディアがフィンゴンの指揮する西軍方としてブレシルの森の男達を率いて出陣。

しかし戦いは敗北に終わり、フィンゴンの軍勢がアングバンドの城門から退却する時にその殿後で討ち死にしました。

ハレスの族の族長位は息子のハンディアが引き継ぎます。

 

ハンディアはナルゴスロンドが滅ぼされた年に、ブレシルに侵入してきたオークと戦って戦死。

族長位は息子のブランディアに引き継がれます。

ブランディアは幼少時の事故が原因で片足が不自由だったことから跛者と呼ばれましたが、大人しい気質で、金属より森を愛し、植物の知識を好み、癒しの術に秀でていました。

この時ハレスの族は相次ぐ戦いの結果人数が減少し、アモン・オベルの山頂に防御柵で囲われた集落を築いて暮らすようになっていました。

ブランディアは戦うことよりも隠れることに一族が生き残る望みを繋いでいたのです。

その地は族長である彼の名からエフェル・ブランディアと呼ばれました。

 

そんな中、彼らの下にフーリンの息子、トゥーリンが訪れてきます。ブランディアはトゥーリンが禍をもたらす者であることを予知しつつも彼を手当しました。

そして回復してトゥランバールを名乗るようになったトゥーリンがオーク退治で活躍すると、ブランディアは民の信望を彼に奪われます。

そんな中、行き倒れになっていたニーニエル(ニエノール)をトゥーリンが発見して連れて来ると、ブランディアは彼女を癒し、愛するようになります。

しかしニーニエルはブランディアを兄と呼んで慕いはしましたが、心はトゥーリンに向けられていました。

やがてニーニエルがトゥーリンに求婚されると、トゥーリンを恋敵と思う気持ちからではなく、彼の背負う不吉な宿命を予知していたがゆえに、ニーニエルにトゥランバールがフーリンの息子トゥーリンであることを明かし、結婚を思いとどまるよう助言します。

この時ニーニエルは渋々助言に従いますが(トゥーリンはニーニエルからブランディアの助言を知り、機嫌を損ねます)、再度トゥーリンから求婚されると結局は受け入れて二人は結婚します。

 

後にトゥーリンがブレシルを襲撃しに来たグラウルングとの戦いに出て行き、ニーニエルもその後を追うと、ブランディアは自らの民を見捨てて彼女の後を追いました。

ブランディアはニーニエルを追ってカベド=エン=アラスに辿りつき、グラウルングとトゥーリンの死を知ります。しかし実際にはトゥーリンは生きており、気を失っていただけでした。

一方ニーニエルは自分の正体(フーリンの娘ニエノールであること)と、トゥーリンが実の兄であったことを知り、ブランディアの制止を振り切って、彼の目の前でテイグリン川に身を投げました。

ブランディアはネン・ギリスで待っていた民に、自分が目撃した悲劇的な顛末を告げましたが、そこに目が覚めたトゥーリンが現れます。

トゥーリンはニーニエルが実の妹ニエノールであったことを認められず、ニーニエルの死は彼女のことで自分を妬んでいたブランディアのせいだと思い込もうとして彼を罵ります。

対するブランディアはグラウルングの最期の言葉を引用してトゥーリンを禍をもたらす者と言い返しました。

そのためブランディアは激昂したトゥーリンによってグアサングで斬り殺されました。

 

ハドルの族についてはブランディアを最後に歴史には登場しません。ブランディアの死後も誰かが族長を継いだのか、それとも家系が滅びたのかは定かではありません。

しかしハドル家の血についてはハドル家のガルドールと結婚したハレスから母系の血として息子のフオルに受け継がれ、そこからトゥオル、エアレンディル、エルロス、そしてヌーメノールやゴンドールの王統へと受け継がれていきます。

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