エダイン三家の話 -ハドルの族-

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ロードオブザリング
Túrin Turambar - Tolkien Gatewayより引用

エダインとは第一紀のベレリアンドに到来したエルフの友たる三家(ドルソニオンのベオルの族、ブレシルのハレスの族、ドル=ローミンのハドルの族)の人間のことを言います。

今回はハドルの族について詳しく見ていきます。

 

ハドルの族はマラハ(Marach)を始祖とし、ハドルを創始者とするエダインの第三家系。始祖マラハの名からマラハの族と呼ばれることもあります。

背が高く好戦的な族で、金髪と青い目が特徴です。

エダインの三つの氏族の中で最も遅くベレリアンドへ到来した、最も人数の多い氏族であり、ベレリアンドへ到来する以前から、ベオルの族とは親しい関係にありました。

マラハの族は整然たる隊伍を組んでエレド・ルインを越えてきたため、人間を快く思わないオッシリアンドの緑のエルフたちも手出ししようとはしませんでした。

彼らは友好関係にあったベオルの族がエストラドに居を定めたことを知ると、自分たちもベオルの族の居住地の東南に住まいます。

 

マラハの息子はマラハ・アラダン。彼はエルダールの王侯貴族に仕えます。

マラハ・アラダンの息子がマゴル。マゴルの息子はハソル。ハソルの息子がハドル・ローリンドルです。

ハドルは若い時にフィンゴルフィン王家に仕えてフィンゴルフィンに寵愛され、後にドル=ローミンの統治権を与えられました。この時ハドルはフィンゴンから龍の兜を下賜されます。

ハドルはこの地に一族のほとんどを集めて定住し、エダインの家系の中でも最も強大なハドル家の祖となりました。

ハドルは66歳の時、ダゴール・ブラゴルラハで包囲されたエイセル・シリオンの防壁の前で、主君フィンゴルフィンの後衛を守って討ち死にします。

 

ハドルの死後は息子のガルドールが跡を継いでハドル家の当主となり、ドル=ローミンの領主となります。

ガルドールはハレス家のハルミアの娘ハレスと結婚し、フーリンとフオルの父となります。

しかしガルドールもダゴール・ブラゴルラハから七年後にモルゴス軍がヒスルムへ攻め寄せた時、エイセル・シリオンの包囲戦でフィンゴンに代わって砦の指揮を執りましたが、矢を受けて討ち死にしてしまいます。

 

ハドル家を継いだのはフーリン・サリオン。彼はモルゴスですら覆し得ないほどの強固な意志の持ち主でした。

しかしそのためにモルゴスの呪いを受け、彼の一族に非業と破滅がもたらされることになります。

父を亡くしたフーリンと弟のフオルはエダインの慣習に基づき、ブレシルで母方の伯父のハルディアによって養育されました。

ダゴール・ブラゴルラハの後の時代、16歳のフーリンと13歳のフオルは、ブレシルを襲撃に来たオークとの戦いに出陣しますが、彼らは仲間とはぐれ、ブリシアハの浅瀬でオークに包囲されます。

しかしウルモの加護によって立ち昇った川霧に救われて敵の目から逃れ、それからディンバールをさまよっていたところをソロンドールの大鷲達によって救い上げられ、ゴンドリンに送られました。

フーリンとフオルはトゥアゴンに受け入れられ、ゴンドリンに一年近く滞在し、エルフから様々なことを学びます。

しかし二人は同族の元に戻ることを望むようになり、ゴンドリンの存在は秘密にすると誓いトゥアゴンに別れを告げると、再び大鷲によって運ばれてドル=ローミンに戻りました。

フーリンとフオルは誓いを守り、自分たちが約一年間どこで何をしていたのかは誰にも語りませんでした。

 

父ガルドールがエイセル・シリオンの包囲戦で戦死すると、フーリンはハドル家を継承してフィンゴンに仕えます。

またダゴール・ブラゴルラハの際にドルソニオンから逃れてきたベオル家のモルウェンを妻とし、トゥーリン、ラライス、ニエノールの父となります。

フーリンは、ニアナイス・アルノイディアドにフオルと共にドル=ローミンの軍勢を率いて参戦。

その大乱戦のさなかにフーリンはトゥアゴンと再会しますが、ウルドールら東夷の裏切りによって部隊は崩れ、フーリンの部隊は撤退するトゥアゴンの部隊の最後衛を守ります。

彼らはセレヒの沢地にまで退き、フオルも他の者も全て討ち死にした中で、フーリンはただ独り斧を振るってゴスモグの護衛のトロルたちと戦い続け、実に70体ものトロルを屠ったそうです。

しかし遂にフーリンは、自らが切り落としたオークたちの腕に埋もれて身動きが取れなくなったことで捕らえられ、ゴスモグによってアングバンドに連行されました。

 

フーリンはモルゴスの前に引き出されて尋問されましたが、モルゴスを歯牙にもかけず嘲ります。

するとモルゴスはフーリンやフーリンの家族を呪い、フーリン自身はサンゴロドリムの高みにある石の椅子に座らされて金縛りにあわされ、モルゴスのねじ曲がった目と耳によって中つ国の出来事を知ることになり、エルフ、特にシンゴルとメリアンへの憎しみが増大されるように仕組まれました。

息子のトゥーリンは行く先々で関わる人々を不幸にさせ、最後は自決。

娘のラライスは3歳の時に悪しき吐息で病死。

もう一人の娘ニエノールはグラウルングの呪いにより記憶を失った状態で兄のトゥーリンと結婚。グラウルングが死んだことで忘却の呪いが解け、全ての記憶を思い出したニエノールは崖から身を投げます。

そしてフーリンの妻モルウェンはトゥーリンを探しに出奔した際にグラウルングの襲撃を受けて仲間とはぐれ、物狂いとなった彼女はその後もずっと荒野を放浪することになります。

 

フーリンの妻は気狂いとなって荒野を彷徨い、息子と娘は非業の死を遂げたにも関わらず、モルゴスの悪意はまだ満足していませんでした。

フーリンの子らが死んでから一年後、モルゴスはフーリンを束縛から解放し、何処へでも好きな処に行って良いと告げます。

モルゴスはこの行為を、打ちのめされた敵に対しての、寛容さによるもののように装いましたが、実の所彼の目的は、フーリンへのさらなる悪意のためでした。

フーリンは再びゴンドリンに行くことを望みますが、ゴンドリンを発見することができず絶望したフーリンは、ゴンドリンがあるはずの方角に向けてトゥアゴンを呼んで叫んでしまいます。

その声はモルゴスの間者に聞かれ、モルゴスにゴンドリンのおおよその位置を知らせてしまうことになります。

その後フーリンは、眠りの中で妻モルウェンの嘆きの声を聞いたため、声がする方へ向かい、カベド・ナイラマルスにあるトゥーリンとニエノールの墓石(不運なる者たちの墓石)に辿り着きます。

この場所でフーリンはモルウェンと再会して彼女の死を看取り、墓石のそばに葬りました。

 

それからフーリンはナルゴスロンドの廃墟へ赴き、ナルゴスロンドの大量の財宝の中からナウグラミーアだけを持ち出してドリアスへ向かいます。

シンゴルの御前でフーリンは、自分の妻子がシンゴルによってドリアスから追放されたというモルゴスの目によって見せられた偽りのために怒りを滾らせ、妻子の保護への返礼と称してシンゴルの足許にナウグラミーアを投げ出します。

しかし彼の言動を咎めるメリアンの言葉によって呪いから解放され、自分がモルゴスに惑わされていたことを悟りました。

フーリンは改めてナウグラミーアを自身の形見としてシンゴルに贈ると、ドリアスを去りますが、彼がもたらしたナウグラミーアは、この後のシンゴルの死とドリアス滅亡の原因となってしまいます。

そして最後にフーリンは目的も望みも全て失って、西海に身を投じたといいます。

 

フーリン一家の死によってハドル家としてはここで途絶えますが、ハドル家の血についてはフーリンの弟フオルからフオルの子へ引き継がれていきます。

フオルはフーリンと共に戦ったニアナイス・アルノイディアドにおいて毒矢に目を射抜かれて死んでしまいますが、フオルはトゥアゴンとの別れの時に、自分とトゥアゴンからエルフと人間の希望の星が生まれると予言します。

フオルはニアナイス・アルノイディアドの前にベオル家のベレグンドの娘である妻リーアンとの間に子供を残していました。

 

フオルとリーアンの息子トゥオルは16歳の時に東夷とオークの襲撃を受け、東夷のロルガンの奴隷にされますが、3年後に脱出。

トゥオルはその後の4年間を無法者として孤独に戦い、東夷やオークに甚大な損害を与え、数々の勲をあげます。

無法者として戦った4年後の年の秋、水の王ウルモの導きによりゴンドリンへ旅立ち、ゴンドリンではトゥアゴンから寵愛を受けます。

トゥオルがゴンドリンに住んで七年後には、かねてより両想いの仲であったトゥアゴンの娘、イドリルとの婚姻がトゥアゴンに認められ、盛大な祝宴が開かれます。

その翌年の春、トゥオルとイドリルの間には息子のエアレンディルが生まれました。

このエアレンディルが「自分とトゥアゴンからエルフと人間の希望の星が生まれる」とフオルが予言した存在で運命の子となります。

 

トゥオルはゴンドリン包囲戦でバルログ5体を打ち倒して包囲網を突破し、エアレンディルと共に脱出。

やがて忍び寄る老いを感じ始めた頃、海への憧れを強くしたトゥオルは、イドリルと共にエアルラーメに乗って西方へ船出し、後世の歌によると、彼のみが死すべき人間の中で特例としてノルドールに加えられることで人間の運命から切り離されたといいます。

 

エアレンディルはベオル家のディオルの娘エルウィングと結婚し、エルロンドとエルロスの父となります。

エアレンディルはアマンへの航海を達成し、ヴァラールに中つ国のエルフと人間のため、哀れみと助力を請います。

エアレンディルの願いは聞き入れられ、モルゴスは怒りの戦いで敗れ滅びます。

半エルフであるエアレンディルと妻のエルウィング、そして二人の息子であるエルロンドとエルロス兄弟は、エルフと人間いずれの種族に属するかの選択を迫られました。

エアレンディルは本心では父方の人間寄りでしたが、選択をエルウィングに委ね、エルフの運命を選んだ彼女に自分も倣います。

エアレンディルがアマンへ航海した船、ヴィンギロトは天空を航行する船となり、額にシルマリルを結びつけたエアレンディルはそれに乗って空の彼方、はるか虚空へまでも航海することになります。

シルマリルの光は、中つ国のエルフや人間への希望の星として空に輝くようになりました。

中つ国では、ヴィンギロトが虚空に向かうときと虚空から帰ってくるとき、つまり明け方と宵の時間に空に見ることができます。

我々の世界で「明けの明星」「宵の明星」として知られているのが、エアレンディルの星です。

 

二人の息子のうちエルロンドはエルフの運命を選び、エルロスは人間の運命を選びます。

エルロスはヌーメノールの初代王となり、そこからハドル家の血もヌーメノールやゴンドールの王統へと繋がっていきます。

 

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