ゴンドールは南方王国と言われるのに対し、アルノールは北方王国とも呼ばれます。
映画の時点ではアルノールはすでに消滅してしまっていましたが、そのアルノール王国の歴史と歴代国王について見ていきます。
イシルドゥアとアナーリオンの父エレンディルの国であるため、アルノール王はゴンドール王に対し上級王の位置にあるとされていました。
そのためエレンディルとエレンディルの死後に上級王になったイシルドゥアが初代と2代目なのはゴンドールと同様です。
そのためゴンドールの歴代王族について、で記載したエレンディルとイシルドゥアについてはこの項では省略とさせて頂き、3代目からの歴史を見ていきます。
・3代目 ヴァランディル 10~249年
イシルドゥアの第四子で末の息子です。
イシルドゥアとその息子達(ヴァランディルの兄達)が最後の同盟の戦いに出陣する時、ヴァランディルはまだ幼かったため、彼は母(イシルドゥアの妻)と共に裂け谷に置いて行かれます。
その結果ヴァランディルは、最後の同盟の戦いの後にも生き残ります。
さらにイシルドゥアと兄達があやめ野の凶事で死んだため、ヴァランディルはアルノール3代目の王となりました。
・4代目 エルダカール 249~339年
目立った記述無し。
・5代目 アランタール 339~435年
目立った記述無し。
・6代目 タルキル 435~515年
目立った記述無し。
・7代目 タロンドール 515~602年
目立った記述無し。
・8代目 ヴァランドゥア 602~652年
目立った記述無し。
・9代目 エレンドゥア 652~777年
目立った記述無し。
・10代目 エアレンドゥア 777~861年
彼の息子たちの不和が原因で、アルノールはアルセダイン、ルダウア、カルドランに分裂します。
長男のアムライスはアルセダインの王となりました。
この先はアルセダイン、ルダウア、カルドランの歴史に分岐していきます。
・アルセダインについて
三国に分裂したアルノールのうち、北西の国。王都はフォルンオスト。
国土はルーン川とブランディワイン川との間の土地、及び風見丘陵までの東街道北部の地域。
ただし風見丘陵とそこから西のブリー郷にかけての土地は、その帰属を巡って他の二国(カルドラン、ルダウア)としばしば争いになりました。
風見丘陵の風見が丘には北方のパランティーアの要である石が置かれ、ちょうど三国の国境が集中していたからです。
アルセダインは分裂した三国の中で最後まで残り、エアレンドゥアの長男アムライスから始まる歴代の王はイシルドゥアの血統を保持しました。
・初代 フォルノストのアムライス 861~946年
アルノール10代目の王エアレンドゥアの長男。
彼と弟たちの不和が原因で、アルノールはアルセダイン、カルドラン、ルダウアの三国に分裂しました。
・2代目 ベレグ 946~1029年
目立った記述無し。
・3代目 マルロール 1029~1110年
目立った記述無し。
・4代目 ケレファルン 1110~1191年
目立った記述無し。
・5代目 ケレブリンドール 1191~1272年
目立った記述無し。
・6代目 マルヴェギル 1272~1349年
彼の治世の初期にアングマールが出現します。
・7代目 アルゲレブ一世 1349~1356年
彼の治世にはカルドランとルダウアにイシルドゥアの子孫が一人も残っていなかったため、彼はアルノール全土の主権を主張します。
しかしこの要求は、アングマールと密かに結託していたルダウアによって拒否されました。
アルゲレブ一世は、アングマールの脅威に対抗するために風見丘陵の防備を強化しましたが、1356年にルダウアとアングマールとの戦闘で討ち死にしました。
彼以降のアルセダイン王は名前に接頭辞ar(a)-を付けるようになり、その伝統はアラゴルン二世にも受け継がれています。
・8代目 アルヴェレグ一世 1356~1409年
カルドランとリンドンの援助を得て、ルダウアとアングマールに占拠されていた風見丘陵から敵を駆逐します。
アルセダインとカルドランの二国は、風見丘陵・東街道・ミスエイセル(にびしろ川)下流の国境線を武力で保持しました。
しかし1409年にアングマールの大軍の攻撃を受け、アルヴェレグは討ち死にしました。
・9代目 アラフォール 1409~1589年
父アルヴェレグ一世の戦死により若くして王位を継ぎましたが、勇敢な人物であり、キーアダンの援助を受けて、フォルンオストと北連丘からアングマールの勢力を駆逐しました。
・10代目 アルゲレブ二世 1589~1670年
1601年にアルゲレブはマルコとブランコの兄弟に率いられたホビットに、後にホビット庄となる土地を与えました。
1636年には悪疫が流行し、エリアドールでもホビットを含む大勢の死者を出します。
疫病は北上するにつれて弱まり、アルセダイン北部での被害は少なかったものの、カルドランのドゥーネダインは滅び、エリアドールの多くが無人の地と化しました。
・11代目 アルヴェギル 1670~1743年
目立った記述無し。
・12代目 アルヴェレグ二世 1743~1813年
目立った記述無し。
・13代目 アラヴェル 1813~1891年
目立った記述無し。
・14代目 アラファント 1891~1964年
予見者マルベスの言葉に従い、生まれた息子をアルヴェドゥイ(最後の王)と名付けます。
1940年、アラファントは時のゴンドール王オンドヘアと協議し、南北両王国を滅ぼさんとする一つの意志に対抗するため、ゴンドールとの同盟を結成します。
その一環として、息子アルヴェドゥイはオンドヘアの娘フィーリエルと結婚しました。
しかしその直後の1944年に、ゴンドールでは馬車族の侵攻によりオンドヘアとその息子たちが戦死。
アルヴェドゥイはゴンドールの王位を要求しますが、これはゴンドール側が拒否しました。
アラファントはその後も、衰えゆくアルセダインの国力でアングマールの攻撃を防ぎ続けました。
・15代目 アルヴェドゥイ 1964~1974年
北方王国最後の王。名はシンダール語で「最後の王」の意味であり、これは予見者マルベスによって名付けられました。
1940年、アルセダインの父王アラファントとゴンドール王オンドヘアが北方王国と南方王国の同盟を結成し、アルヴェドゥイはオンドヘアの娘フィーリエルと結婚します。
1944年、オンドヘアとその息子たちが馬車族との戦いで死ぬと、アルヴェドゥイはイシルドゥアの直系の子孫として、またフィーリエルの夫として、ゴンドールの王位を要求。
しかしアルセダインの国威はゴンドールに比べると非常に小さなものになってしまっていたため、要求はオンドヘアの執政であるペレンドゥアを中心としたゴンドール人から拒否されます。
1945年にゴンドール王家の血を継ぐエアルニル二世がゴンドール王に即位しましたが、アルヴェドゥイはそれ以上自分の要求を押し通そうとはしませんでした。
1964年にアルセダインの王位を継ぎますが、1974年にアルセダインはアングマールに急襲されて王都フォルンオストは占領されます。
アルヴェドゥイは最後まで北連丘に踏みとどまって防戦に努めましたが、やがて北へ逃亡し、青の山脈の外れにあるドワーフの廃坑に逃げ延びました。
その後アルヴェドゥイと彼の僅かな供回りは、飢えに襲われて廃坑から出てきたところを、フォロヘルのロスソス族に救われ、彼らの元で助けを待ちました。
1975年、キーアダンが救援のために派遣した船がフォロヘル湾に現れた時、彼はロスソス族の族長にバラヒアの指輪を謝礼として渡して別れ、船に乗ります。
この時に族長は夏まで待つようアルヴェドゥイに警告しますが、彼はそれを無視した形となり、船はフォロヘル湾で悪天候に見舞われて難破し、アルヴェドゥイは滅びました。
そして彼と共にアンヌーミナスとアモン・スールのパランティーアも海中に没しました。
こうして予言された通りアルヴェドゥイは北方王国最後の王となり、もはやアルセダインは再建されることはありませんでした。
生き残った同国のドゥーネダインは王統であるイシルドゥアの世継を族長として戴き、エルロンドをはじめ裂け谷のエルフらと協力しながら北方に残るサウロンの下僕と戦い続けます。
以後彼らは野伏と呼ばれる放浪の民となり、その土地の人々に訝しがられながらも人知れずかれらを守ることを任務としました。
アルヴェドゥイの長男アラナルスが初代の族長となります。
この先は北方の野伏の族長の系譜についても辿ります。
・初代 アラナルス 1976~2106年
アラナルスは生き残ったドゥーネダインを束ね、1976年に最初の野伏の族長となります。
彼の族長時代の2063年から警戒的平和が始まりました。
・2代目 アラハイル 2106~2177年
目立った記述無し。
・3代目 アラヌゥイア 2177~2247年
目立った記述無し。
・4代目 アラヴィア 2247~2319年
目立った記述無し。
・5代目 アラゴルン一世 2319~2327年
狼に殺されたという記述のみあり。
このアラゴルン一世がいるため映画で主役級の人物だったアラゴルンは正しくはアラゴルン二世です。
・6代目 アラグラス 2327~2455年
目立った記述無し。
・7代目 アラハド一世 2455~2523年
彼の時代の2460年に警戒的平和が終わり、2480年頃にはサウロンによって霧ふり山脈に送り込まれていたオークの脅威が顕在化しました。
・8代目 アラゴスト 2523~2588年
目立った記述無し。
・9代目 アラヴォルン 2588~2654年
目立った記述無し。
・10代目 アラハド二世 2654~2719年
目立った記述無し。
・11代目 アラススイル 2719~2784年
彼の時代に霧ふり山脈のオークが勢いを増し、2740年にエリアドールへ侵入したため、野伏はエルロンドの息子たちと協力してオークと戦いました。
オークは遠くホビット庄まで侵入し、2747年には緑野の合戦が行われます。
また2758~59年には長い冬がエリアドールを襲い、ホビットを含む大勢の命が失われました。
・12代目 アラソルン一世 2784~2848年
目立った記述無し。
・13代目 アルゴヌイ 2848~2912年
晩年の2911年に凶年の冬がエリアドールを襲い、北方から白狼が襲来しました。
翌年にはミンヒリアスとエネドワイスが大洪水で荒廃し、交通の要所であったサルバドの街も廃墟と化します。
・14代目 アラドール 2912~2930年
イムラドリス北方(おそらくエテン高地)の岩山で山トロルの一団に捕えられて殺されたとの記述のみあります。
・15代目 アラソルン二世 2930~2933年
アラゴルン二世の父。
アラソルンは2929年、56歳の時に34歳年下のギルラインに求婚します。
この時、ギルラインはドゥーネダインの婦人が普通結婚する年齢には達しておらず、それに加えてギルラインの父ディーアハイルはアラソルンは早くに族長となるが短命であると予見し、結婚に反対します。
しかしディーアハイルの妻イヴォルウエンはこの二人からドゥーネダインの望みが生まれることを予見し、同年アラソルンとギルラインは結婚しました。
翌2930年、父アラドールは山トロルに殺され、アラソルンは野伏の族長となります。
さらにその翌年の2931年、ギルラインとの間にアラゴルン二世が生まれました。
そして2933年、アラソルンはエルロンドの息子たちとオーク討伐に出かけた折、オークの矢に目を射抜かれ、ドゥーネダインにしては短命の60歳で死にました。
息子のアラゴルンは当時2歳と幼かったため、アラソルンの死後はエルロンドの養子として裂け谷に預けられることになり、敵の目を逃れるためにその出生は彼が成人するまで秘密とされました。
・16代目 アラゴルン二世 2951年~3019年5月1日
アラゴルン二世の生涯について、をご参照ください。
・カルドランについて
三国に分裂したアルノールのうち南の国。
西はバランドゥイン(ブランディワイン)川、東はグワスロ(灰色川)とミスエイセル(にびしろ川)、北は東街道を国境としました。
王の系譜などは記録にありません。
カルドランにおいてはイシルドゥアの血統はほどなく絶えてしまい、アルセダインのアルゲレブ一世が再びアルノール全土の統治権を主張するとそれに同調します(しかしアングマールと結託したルダウアはこれを拒否しました)
1356年にアルゲレブがルダウアとアングマールの攻撃を受けて討死すると、カルドランはリンドンと共にアルセダインのアルヴェレグ一世を援助して風見丘陵から敵を駆逐します。
その後アルセダインとカルドランは協力してルダウアとの国境線(風見丘陵、東街道、ミスエイセル)を武力で保持しました。
しかし1409年のアングマールの大攻勢によって守りは破られ、カルドランの国土は荒廃します。
この時に最後の君主(last prince)が討死し、カルドランのドゥーネダインの残党はティルン・ゴルサド(塚山丘陵)と古森に逃れて抵抗を続けました。
1636年には悪疫がエリアドールに広がり、カルドランに残っていた住民のほとんどが死に絶えます。
これによってカルドランのドゥーネダインは滅び、塚山丘陵にはアングマールとルダウアからやってきた悪霊(塚人)が棲み着くようになりました。
『指輪物語』作中でフロド・バギンズたち4人のホビットが塚人に囚われた塚は、1409年の戦いで討死したカルドラン最後の君主のものであったそうです。
トム・ボンバディルはこの塚山から塚山出土の剣を発掘してホビット達に与えました。
・ルダウアについて
三国に分裂したアルノールのうち、北東の国。
国土は、西は風見丘陵、北はエテン高地、東は霧ふり山脈、南は東街道に囲まれた土地で、これにミスエイセル(にびしろ川)とブルイネン(鳴神川)の間の三角地も含みました。
イシルドゥアの血統はほどなく絶えてしまい、ドゥーネダインの数も少なかったため、やがて山岳人のある邪悪な領主に実権を握られました。
その後ルダウアはアングマールと結託して属国と化し、アルセダインおよびカルドランを攻撃するようになります。
1409年にアングマールの大軍が旧アルノール諸国を攻撃すると、ルダウアはアングマールに臣従する邪悪な人間たちに占領され、国内に残っていたドゥーネダインは殺されるか西へ逃亡しました。
その後は歴史に登場せず、アングマールに飲み込まれて消滅したものと思われます。
『指輪物語』作中で、アラゴルン二世に導かれたフロド達一行は裂け谷を目指す道中、トロルの森の近辺でルダウアの廃墟を目にしています。
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