映画の作中でも重要な役割を果たしたパランティアについて解説します。
パランティアはクウェンヤで「遠くから見張るもの」(Those that watch from afar)の意。
第一紀にフェアノールによって作られました。
覗き込むと遠方を見ることができる暗い水晶球で互いに通信する機能を持ち、石を使う者同士は意思の疎通を図ることもできます。
フェアノール達ノルドールが中つ国に帰還した後もアマンに留め置かれ、第二紀末のサウロンの影響下にあったヌーメノールにおいて、トル・エレッセアのエルフから忠実なる者たちへの贈り物としてアマンディルに贈られました。
アマンディルの死後は子のエレンディルに受け継がれ、ヌーメノールが没落した際にエレンディル父子がは七つのパランティアを携えて中つ国へ帰還しました。
パランティアはエレンディル、イシルドゥア、アナーリオンによって分割され、アルノール(エミン・ベライド、アモン・スール、アンヌーミナス)とゴンドール(ミナス・イシル、ミナス・アノール、オスギリアス、オルサンク)に配置されて、彼らの王国の連絡と警戒のために使われました。
しかし第三紀にイシルの石がサウロンに奪われた後は、他のパランティアを覗くとサウロンの石に繫がってしまい、心を蝕まれてしまう危険が生じました。
そのためパランティアを覗こうとする者は現れなくなり、さらに戦乱で多くの石が失われた結果、一部の者を除いて次第にその存在は忘れ去られていきました。
しかし指輪戦争において、機能する石が3つ現存していたことが明らかとなり、物語において重要な役割を果たすことになります。
以下に中つ国にやってきた7つの石についてそれぞれ紹介していくこととします。
・オスギリアスの石
七つの石の中心となる親石であり、これのみが他の石同士の通信を傍受する機能を持っていました。
そのためゴンドールの首都オスギリアスの星辰殿に配置されましたが、第三紀1437年に同族の争いでオスギリアスが戦場となったとき、大河アンドゥインに没して失われました。
・イシルの石
指輪戦争時に現存していた石の一つ。
ゴンドールのミナス・イシルに置かれていましたが、第三紀2002年にミナス・イシルがナズグールに占領されてミナス・モルグルと化した時に敵に奪われます。
やがてサウロンが使用するようになり、その戦略の一端としてオルサンクの石およびアノールの石を捕捉するために主に用いられました。
これを使ってサウロンはサルマンを堕落させてアイゼンガルドの戦力を動かし、またデネソール二世の精神を蝕んでペレンノール野の合戦で同士討ちを生じさせます。
最終的に大いなる年のバラド=ドゥーアの崩壊によって失われたと思われます。
・アノールの石
指輪戦争時に現存していた石の一つ。
ゴンドールのミナス・アノール(後のミナス・ティリス)の白の塔に置かれていました。
この石と結び付きの強いイシルの石がサウロンに奪われると、使われることはなくなり、やがてその存在は執政にのみ代々伝えられる秘密となります。
しかしデネソール二世は密かにこれを使って、サウロンの意志に抵抗しながら国の内外について多くの知識を得ると同時に、消耗して次第に精神を蝕まれていきました。
オルサンクの石の存在が明らかになった時ガンダルフは、喪失したという記録のないアノールの石もまた現存しているに違いないと思い至り、デネソールとモルドールの繫がりを危惧して急ぎミナス・ティリスへ向かうことを決めました。
最後には、石を通してミナス・ティリスに迫るモルドールの軍勢を見たデネソールが絶望して狂気に陥り、執政家の廟所で石を持ったまま焼身自殺を遂げます。
以後は強力な意志の持ち主以外は、この石を覗いても火の中でしなびゆく老人の二本の手しか見ることができなくなったといいます。
・オルサンクの石
指輪戦争時に現存していた石の一つ。
アイゼンガルドのオルサンクの塔に置かれていました。
ゴンドールがオルサンクを放棄して以後忘れ去られましたが、サルマンはゴンドールで伝承を調査する内にこの石の存在と使い方を知ったらしく、彼がオルサンクの管理権を得たときに実際に発見されました。
長い間、サルマンはあえてそれを使用しようとはしなかったようですが、第三紀3000年頃にとうとう使用し、イシルの石を持つサウロンに捕捉されて毒されることとなります。
サルマンは定期的に石を通じた報告を行うことを強いられましたが、表向きは恭順したふりをしつつ、内心ではサウロンを出し抜こうと目論んでいたようです。
指輪戦争においてはアイゼンガルドとモルドールは石を通じて連絡し、パルス・ガレンにおいて共同で指輪の仲間を襲撃するなど連携した行動を取りました。
アイゼンガルドの敗北後は、グリマがアイゼンガルドの塔からこの石を投げ落とし、ペレグリン・トゥックが石を拾い上げます。
その後ペレグリンは衝動に駆られ、この石を覗き込み、サウロンに自分の姿をさらしてしまいます。
サウロンは長時間ペレグリンを尋問しなかったため、フロドや一つの指輪についての情報が漏れることはありませんでしたが、この事件がきっかけで、石がパランティーアであることが判明し、アイゼンガルドとモルドールの連携の理由も明らかとなります。
ガンダルフは、(エレンディルの正統な王位継承者としてパランティアの正当な所持者である)アラゴルン二世にこの石を渡すと、アラゴルンはこの石を使い、サウロンに自分の姿とアンドゥリルを見せつけて挑戦。
そうすることによって、サウロンの目をモルドール国内(つまりフロド・バギンズ)から逸らさせようとします。
また、その時同時にアラゴルンは石の力で、ミナス・ティリスに対し海賊による南方からの攻撃が迫っていることを知ります。
これによりアラゴルンは死者の道を通り、死者の軍勢を招集することを決意しました。
またこの一連の経緯は、アラゴルンが一つの指輪を手に入れたのではないかという印象をサウロンに与えることとなりました。
指輪戦争の終結後は、この石が中つ国に残された唯一の機能する石となり、再統一された王国の王となったアラゴルンは、この石を国内の観察に用いるものとしました。
・アモン・スールの石
アルノールにある風見が丘のアモン・スールの塔に置かれていました。
この石はオスギリアスの石と並んで最も力が強く、ゴンドールとの連絡には主にこの石が使われた為、北方のパランティアの要と見なされました。
そのためアルノールが分裂すると、この石の帰属をめぐってアルセダイン、カルドラン、ルダウアの間で争いが起こりました。
第三紀1409年にアングマールの攻撃によってアモン・スールの塔は毀たれ、パランティアは戦火を逃れてアルセダインの首都フォルンオストに避難させられます。
しかし1975年、北方王国最後の王アルヴェドゥイの乗った船がフォロヘル湾で難破したとき、アンヌーミナスの石と共に海中に没しました。
・アンヌーミナスの石
アルノールの首都アンヌーミナスに置かれ、アルノール王によって用いられました。
第三紀1409年にアングマールがアルノールを席巻した際に、アモン・スールの石と同じくフォルンオストへ避難させらます。
最後はアモン・スールの石と共にフォロヘル湾に没して失われました。
・エレンディルの石
エミン・ベライド(塔山丘陵)のエロスティリオンの塔に置かれていました。
この石は他の石とは違い、西方の海の彼方だけを見ることができたといいます。
エレンディルはこの石を使って失われたヌーメノールを偲び、またトル・エレッセアのアヴァルローネの塔を見ることさえあったといいます(そこには全てのパランティーアの親石が置かれていると言われていました)
塔とこの石はキーアダンとリンドンのエルフによって管理されており、中つ国に残っていた上のエルフも、時折この石を使ってアマンを見たといいます。
第三紀3021年、三つの指輪の守護者と指輪所持者たちがアマンへ去る時、キーアダンは彼らの乗る船にこの石も乗せました。
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