なぜエルフとドワーフは仲が悪いのか

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ロードオブザリング
Nauglamír - Tolkien Gatewayより引用

映画では元々仲が悪かったエルフのレゴラスとドワーフのギムリが友情を深めていく様子が描かれていました。

しかしそもそもなぜエルフとドワーフは仲が悪いのかというところは映画でも触れられることはありませんでした。

 

エルフとドワーフの確執は遠い昔の第一紀まで遡ります。

原因はナウグラミーアという首飾りにありました。

このナウグラミーアは元々青の山脈のドワーフが、フィンロドのために作った首飾りです。

フィンロドはドワーフの協力を受けて、洞窟にナルゴスロンドを築き、ナウグラミーアはフィンロドとドワーフとの友好の証でした。

ナウグラミーアは上古のドワーフが手がけた品物の中でもっとも名高いものであると言われ、フィンロドがヴァリノールから持ってきた無数の宝石も嵌め込まれました。

身に付けても重さを感じさせず、誰が帯びても美しく似合って見える魔力があったと言います。

 

そんなナウグラミーアもナルゴスロンドがグラウルングに滅ぼされて占拠されると、他の財宝と共に死蔵されます。

その後、フーリンがナルゴスロンドの廃墟からこれを持ち出してドリアスへ向かい、妻子を保護した返礼及び自身の形見としてドリアスの王シンゴルに贈りました。

そしてベレンとルーシエンが取り戻したシルマリルに魅了されるようになっていたシンゴルは、シルマリルをナウグラミーアに嵌め込むことで常時手許に置いておくことを考えます。

そこでたまたまドリアスに滞在していたノグロドのドワーフの一団にこの仕事を請け負わせました。

 

しかしドワーフ達は先祖の宝とシルマリルの輝きに魅了されて、完成した品物の引き渡しを拒否します。

彼らの言い分は、ナウグラミーアはもともと彼らの先祖が作ってフィンロドに与えたものであり、フーリンはそれを盗み出したのであるから、シンゴルに所有権はないというものでした。

しかしドワーフの言葉の裏にシルマリルへの渇望があることを見て取ったシンゴルは激怒して彼らを侮辱し、報酬なしに立ち去るよう命じました。

そしてこれに怒ったドワーフはシンゴルを取り囲んで殺し、シルマリルとナウグラミーアを奪いました。

 

このドワーフ達はドリアスを逃れることができずレギオンの森で殺されましたが、逃げ延びた二名はノグロドの同胞に「シンゴルが報酬を渋って仲間を殺した」と事情を省略して伝えました。

このためノグロドのドワーフはドリアスを攻撃し、シルマリルとナウグラミーアは再びドワーフに奪われることになります。

このことを知ったベレンは息子のディオルと緑のエルフを引き連れて、ノグロドへ帰る途上のドワーフを待ち伏せし、シルマリルとナウグラミーアを取り返します(サルン・アスラドの合戦)

 

こうしてナウグラミーアとシルマリルはエルフの手からもドワーフの手からも離れましたが、ナウグラミーアを巡る争いはエルフとドワーフの間に深い禍根を残すことになりました。

これらの話はシルマリルの物語に描かれておりますが、ホビットの冒険にも簡略化した記述がありますので、以下に引用します。

「とおい昔このエルフたちは、あるドワーフ族と戦争をしました。エルフたちはそのドワーフたちが自分たちの宝をぬすんだと非難したのですが、ドワーフたちにはちがういい分がありました。エルフの王が、金銀のあら石を細工してくれとたのんだくせに、あとになってその支払いをしなかったのだから、自分のてま賃をとっただけだ、というのでした。」

このエルフたちというのはレゴラスの父であるスランドゥイルが王として治める闇の森のエルフを指しますが、闇の森のエルフたちは元々ドリアスにいたシンダールエルフであり、レゴラスもシンダールエルフです。

そしてノグロドのドワーフたちも後にモリアに移り住んで、モリアの王の遠い子孫としてギムリが生まれるのです。

つまりレゴラスとギムリの友情は遠い昔の禍根を終わらせる歴史的な和解であったという解釈もできるのではないでしょうか。

 

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