ノルドールの上級王フィンウェとミーリエルの長子で、フィンゴルフィンとフィナルフィンの異母兄。
ノルドール族の史上もっとも技芸に優れた者と言われ、フェアノール文字を考案し、シルマリルを制作した。パランティーアも彼の作と言われる。
まさにシルマリルの物語の主人公格の人物で、彼がシルマリルを作り出さなければ中つ国の歴史は動き出さなかったとも言える。
青年期のフェアノールは自らの知識や技術の追求に没頭し、フェアノール文字や、天然のものよりも強い光を発する人工の宝石、マンウェの鷲の目のように遠方の物事を見ることができる石といった多くの偉大な発明を成した。
そして心身ともに成熟し、持てる能力を完全に使いこなすようになったフェアノールは、彼の最高傑作であるシルマリルを制作するにいたる。
この三つの宝玉にはヴァリノールの二つの木の光が生きたまま込められていた。彼のシルマリル制作には、近づきつつある運命の予感があったのだとも言われている。結局はシルマリルの中にのみ、ヴァリノールの光が不滅のまま保たれることになったからである。
シルマリルを目にした者は誰もが驚嘆と喜びに満たされた。しかしフェアノールの心は自ら作ったこの作品に堅く縛り付けられており、やがてフェアノールは自尊心から、シルマリルの輝きを自分と父、そして自分の息子たち以外の者に見せることを惜しむようになっていった。
しかしマンウェが開いた祝宴で、二つの木が、メルコールとウンゴリアントによって枯死させられ、ヴァリノールが暗闇に襲われるという事件が起こる。
ヤヴァンナは、シルマリルに保存された光を取り出せば二つの木を蘇生させることができると訴えたが、フェアノールはシルマリルを引き渡すことを拒否する。
さらにフィンウェがメルコールに殺され、シルマリルが奪われたという報せがもたらされた。父フィンウェのことを何よりも愛していたフェアノールは、メルコールを「モルゴス」と呼んで呪い、暗闇に走り去った。
やがて不意にティリオンに現れたフェアノールは、ノルドール族を前に大演説を行い、モルゴスへの復讐とシルマリルの奪還を訴え、ヴァラールの束縛から逃れて自由を得るために中つ国へと帰還するよう扇動した。
そしてフェアノールと彼の七人の息子たちは、相手が誰であろうとシルマリルを持つ者を、復讐と憎悪をもって追跡するという誓言を立てた。
中つ国に到着したフェアノール達に対し、モルゴスの軍勢は、まだ準備が整っていないフェアノールの軍勢を襲撃した(ダゴール=ヌイン=ギリアス)。
フェアノールの軍勢は数において劣り、不意をつかれたにも関わらず速やかに勝利を収めた。だがフェアノール自身は怒りのあまり味方から突出して敵に包囲され、さらにバルログ達がやってくる。
ドル・ダイデロスの境界で孤立無援となったフェアノールは火に包まれ、多くの手疵を負いながらも怯むことなく、長い間踏みこたえていたが、とうとうバルログの首領ゴスモグによって致命傷を負った。
フェアノールは追い付いてきた息子たちによって救出された後、ミスリムに引き揚げる途中のエイセル・シリオンに近いエレド・ウェスリンの山腹で、自らの死期を悟って足を止めさせた。
サンゴロドリムの城砦を目にしたフェアノールは、死を前にした予見の力により、ノルドール族のいかなる力をもってしてもそれを覆すには至らないことを悟ったが、そのことを口に出そうとはせず、モルゴスの名を三度罵り、息子たちに誓言の死守と父の仇を討つことを託して死んだ。
彼の魂は火のように燃え、自らの肉体を灰にして飛び去ったという。
エルフ族の中で他に比肩する者のない才能と孤立無援状態でバルログ軍団に囲まれて敗れたとはいえダゴール=ヌイン=ギリアスで見せた強さを見ると、エルフという種族の中で最強クラスの人物であることは間違いないだろう。
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