魔法使い(イスタリ)の話1 サルマンの生涯

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ロードオブザリング
映画ロードオブザリングより引用

ロードオブザリングに出てくるガンダルフやサルマンなどの魔法使いのことをイスタリと言います。

イスタリとはクウェンヤでthose who know(知る者たち)の意です。

その正体はヴァラールより遣わされたマイアの精霊です。

第三紀の1000年ごろに中つ国の北東に打倒サウロンのためにやってきました。

ヴァラールは、かつてエルフを守ろうとして自らの栄光と力を誇示したことを重大な過ちだったと考えていました。

そのためヴァラールはサウロンの打倒は自由の民によってなされるべきだと考え、マイアであるサウロンよりも弱いマイアールを選び、かつかれらが中つ国の民に対しアイヌアの力を誇示し、支配することも禁じます。

そのためイスタリは、直接力でもってサウロンに対抗することも、中つ国の民を支配することも禁じられ、あくまで助言者で援助者という立場からサウロンおよびその召使と戦うことが要求されました。

そしてイスタリは見せかけでない本物の人間の肉体を身に纏っていました。

これによりアイヌア本来の叡智と力は曇り、飢えや恐れなどの肉体的脅威に晒され、容易に堕落することも死ぬこともありえた危険な任務となりました。

中つ国にイスタリとして到来したのは5人ですが、結果的に、サウロン打倒の任務を完遂して帰還したのは灰色のガンダルフただ一人でありました。

本日はまずサルマンの生涯についてまとめます。

 

・白のサルマン

マイア時代の名はクルモで「技巧者(skilled one)」の意。元々はアウレに仕えるマイアでした。

彼は多くの者からイスタリの長と見なされており、サウロンの脅威に対抗するために結成された白の会議の議長も務めました。

イスタリの内、最も早く中つ国に上陸したのがサルマンであり、彼は青の魔法使いとともに中つ国の東方まで旅をしましたが、戻って来たのはサルマン一人であったといいます。

また、サルマンは賢者達の中で最もゴンドールと親密であり、ミナス・ティリスに保管されている伝承や記録にも精通していました。

第三紀2759年にはゴンドールの執政ベレンよりオルサンクの鍵を与えられ、アイゼンガルドを租借して居城とします。

彼は、大侵略と長い冬で疲弊していた、フレアラフ王の統治するローハンの民を助けるなど、ゴンドール、ローハンの同盟者として働きました。

 

イスタリの最高位である白の賢者として、サルマンは元来は高貴な者でした。

しかしガンダルフに対する密かな妬みや恐れから次第に自尊心の虜となり、堕落していきます。

きっかけはガンダルフがキーアダンよりナルヤの指輪を授けられたことに気付いたことのようです。

また、サウロンと力の指輪についての知識を深めていったことも堕落の危険につながっていきました。

サウロンの技を研究するにつれてそれに驚嘆していったサルマンは、ついにはその模倣者に成り下がり、一つの指輪を自分自身で用いることを望むようになります。

内心で白の会議を裏切る者となった彼は、一つの指輪を手に入れるための策を弄し、2851年にはあやめ野一帯の捜索を開始します。

ガンダルフによるドル・グルドゥア攻撃の提案を2851年に却下したのも、サウロンを放置すればそれに引き寄せられた一つの指輪を発見できるかもしれないと考えたためでした。

しかし2941年になると、力を増したサウロンがアンドゥインの捜索を行うことを妨げるため、ドル・グルドゥア攻撃に同意します。

サルマンはこの攻撃で大きな役割を果たしますが、既に白の会議は時機を逸しており、サウロンのドル・グルドゥア放棄と敗走は見せかけにすぎませんでした。

2953年にはサルマンはアイゼンガルドに引きこもり、アイゼンガルドの要塞化を推し進め、人間やオーク(ウルク=ハイ)からなる軍事力の構築に腐心するようになります(そのためにファンゴルンの森の木々を伐採し、エントの怒りを買うことになります)。

一方でガンダルフを妬み恐れたサルマンは、ガンダルフがホビットとホビット庄に多大なる関心を示していることを間者の情報によって知ると、ブリー郷とホビット庄への浸透を始め、手先のごろつき達を送り込むようになりました。

3000年頃にはサルマンはそれまであえて使わなかったオルサンクのパランティーアを使用。

するとミナス・モルグルのパランティーアを持つサウロンの目に捕らえられてしまい、さらに堕落することになります。

サルマンはサウロンに対して、表向きは従っているように見せ掛けながら、実際は一つの指輪を手に入れ、その力により自分がサウロンに取って代わろうとしました。

 

指輪戦争前には、サルマンはローハンの蛇の舌グリマを間者として取り込む一方で、褐色人と同盟を結び、ローハンを攻略する準備をします。

大いなる年の7月にはガンダルフをアイゼンガルドまでおびき寄せ、彼を自らの陣営に取り込もうと試みますが、籠絡に失敗したため、サルマンはガンダルフをオルサンクの頂上に幽閉します。

しかしガンダルフは、ラダガストより派遣されたグワイヒアにより救出され、サルマンの白の会議への裏切りが露呈することになりました。

するとサルマンは公然と一つの指輪を手に入れるべく行動を開始し、モルドールと連絡してローハンへの侵略を開始します。

その一方でサルマンは指輪を手に入れるため、大河へウルク=ハイの手勢を差し向けてパルス・ガレンにて指輪の仲間を襲撃し、ボロミアを打ち倒してメリーとピピンを捕えることに成功します。

アイゼンガルドのウルク=ハイはアイゼンガルドまでホビットを連行していこうとしましたが、一隊はその途上でエオメル率いる騎馬隊の攻撃を受けて全滅。

さらに取り逃がしたホビット二名がきっかけとなってエントが一大蜂起し、エントとフオルンの大軍によってアイゼンガルドは陥落。

角笛城を攻撃した大軍勢も、ローハン軍の頑強な抵抗にあった末にガンダルフが呼び集めたエルケンブランドの援軍によって打ち破られ、敗走したところを待ち構えていたフオルンによって全滅させられました。

 

こうしてほとんどの力を失ったサルマンでしたが、なおもオルサンクに立てこもったため、エントはアイゼンガルドの要塞を打ち崩して水没させ、サルマンを塔に閉じ込めます。

交渉へやってきたガンダルフとセオデンの一行に対しては、彼らからの和議の条件を拒み、わずかに残った声の魔力を弄して籠絡を試みるも、ことごとく失敗に終わります。

堕落したサルマンに代わって白の賢者となったガンダルフはサルマンを賢人団と白の会議から追放し、その杖を折ります。

さらにその直後、グリマによってパランティアまで失うこととなります。

こうして双方に裏切りの露呈したサルマンは、モルドールからの報復を恐れながら、逃げることもできない立場に追い込まれました。

 

指輪戦争が続く内はそのまま塔に閉じ込められていましたが、サウロンが滅ぼされた後の8月、ついにサルマンは木の鬚を説き伏せてグリマとともにオルサンクを脱出します。

そのまま行くあてもなく褐色人の国を物乞いをして歩いていた両者は、旅を終えて帰路についていた指輪所持者らの一行と遭遇。

そこで自分の破滅を招いたホビットへ復讐することを思いつきます。

かねてから手先を浸透させていたホビット庄へ先回りしたサルマンは、ごろつきの頭目シャーキーとして庄の自然と村落を荒廃させていきます。

しかしこの行いも帰還したフロドらホビット達の活躍によって阻まれ、手下のごろつきは水の辺村の合戦で一掃されます。

すると姿を現したサルマンはフロド達をあざ笑い、さらに隠し持っていたナイフでフロドを刺し殺そうとしました。

しかしこの凶行もフロドが着込んでいたミスリルの胴着によって失敗します。

取り押さえられ、サムからは剣を向けられたサルマンを、フロドは憐れみから傷つけることを望まず、彼が救済されることを願って命を助け、ホビット庄から追放するのみに留めます。

サルマンはこの情けに敬意と恨みの両方を抱き、穏やかに立ち去るかに見えました。

しかしグリマが庄に留まることを赦されたのを見ると、グリマを足蹴にして自分に付き従うよう強要します。その結果、ついに激昂したグリマによって刺し殺されました。

すると亡骸からは人の形をした霞のようなものが立ち上がってきて西方を仰ぎ見ましたが、そこから吹いてきた冷たい風に吹き払われて消失。

そして亡骸は長い年月が一挙に訪れたかのように急速に萎びていきました。

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