魔法使い(イスタリ)の話2 ガンダルフの生涯

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ロードオブザリング
映画ロードオブザリングより引用

魔法使いについて紹介するシリーズ。

前回のサルマンに続き、今回はガンダルフを紹介します。

・灰色のガンダルフ

本来の名はオローリン。「灰色の放浪者」を意味するミスランディアとも呼ばれました。

ヴァリノールにおいてオローリンはもっぱら目に見える姿をとらずにエルフの間を歩き回り、その心に美しい心象を注入するマイアでした。

彼はサウロンを恐れ、イスタリの任務に当たるには力劣ると自認していましたが、それゆえに一層マンウェとヴァルダにイスタリとして推挙されたといいます。

中つ国では自分の家というものを持たずに広く放浪を続け、サウロンと戦う人々を援助し、困窮する者には誰にでも手を差し伸べて歩きました。

迫り来る危難を誰よりも早くに予測して対策を立て、多くの破局から人々を救いましたが、一方で「不吉の運び手」というような不名誉な見方をされることもありました。

ガンダルフはイスタリの中で一番最後に中つ国にやってきます。中つ国で彼を出迎えたキーアダンから密かに火の指輪ナルヤを譲り受けており、第三紀を通じてその守護者となります。

彼は中つ国北西部をあまねく歩きまわって自由の民の友となり、中でもエルフと親しく交流します。

 

2063年には力を増した闇の森の影を憂慮して、死人占い師の正体を見極めるために単身ドル・グルドゥアへ潜入。その結果死人占い師は要塞を捨てて逃亡し、警戒的平和がもたらされます。

死人占い師がドル・グルドゥアに帰還し、警戒的平和が終わると、賢人達はこれに対処するため2463年に白の会議を結成し、ガンダルフもその一員となります。

発起人のガラドリエルは当初ガンダルフを議長に推しましたが、ガンダルフが辞退したため、白のサルマンが議長となりました。

2850年、ガンダルフは再びドル・グルドゥアへ潜入し、死人占い師の正体がサウロン本人であることを確認するとともに、その土牢で今際のきわにあったあるドワーフから、エレボール(はなれ山)の隠し戸の鍵とスロールの地図を受け取ります。

後にガンダルフはこの鍵をトーリン二世に渡し、彼らがはなれ山に潜入するのに使われることになります。

2758年から翌年に渡って到来した長い冬は、各地に甚大な被害をもたらし、その折にガンダルフは彼らを援助するためにホビット庄へやって来ました。

以来、多年に渡ってホビットと親しく交友し、この種族の真価を見抜くに至った最初の人物となります。

そして2941年、ガンダルフはホビット庄を訪れ、ドワーフのエレボール遠征のためにビルボ・バギンズを旅に連れ出しました(『ホビットの冒険』)

 

当時ガンダルフは、サウロンがドル・グルドゥアから機先を制してロリアンと裂け谷を攻撃する準備を進めていること、すでに北方の自由の民はゴブリンや龍によって分断されており、もしサウロンの攻撃が実行されればそれに抗しきる望みがないこと、加えてこの攻撃にスマウグが破滅的な役割を果たすかもしれないことなどを思い悩んでいました。

そんな中休息のためホビット庄へ向かっていた途上、ブリー村で偶然トーリン二世と出会います。

トーリンのスマウグへの復讐計画に事態を打開する望みを見出したガンダルフは、彼の遠征を手助けすることを約束するとともに、(サウロンの妨害を避けるため)遠征は隠密任務とするべきであることと、助っ人としてホビットのビルボ・バギンズを連れて行くべきであるとトーリンを説得します。

ビルボを連れて行くことを思いついたのは、ホビットが隠密任務に大いに役立つだろうという見込みと、少年時代のビルボが外界への憧れを抱いていたことを見抜いていたためでした。

しかし中年に達したビルボはすっかり腰を落ち着けてしまっており、そのためトーリンの説得とビルボを焚き付けるのに大いに苦慮することになります。

思いがけないお茶会を演出し、スロールの地図と鍵を切り札に使うことでその二つをなんとか切り抜けたガンダルフは、そのままトーリンとその仲間の旅に同行し、彼らを助けます。

そして白の会議を動かすため、闇の森の入り口でトーリンらと別れました。

サウロンがトーリンらの遠征を妨害することを阻止する必要性から、ガンダルフはドル・グルドゥアへ攻撃を加えるよう会議を説得し、彼自身も攻撃に加わりました。

この攻撃によって、死人占い師をロヴァニオンから追い出すことに成功します。

その後、五軍の合戦がはじまろうとするはなれ山においてビルボと再会。

また、ゴブリンとアクマイヌの連合軍が迫っていることを各陣営に警告するなど、自由の民が合戦を切り抜けられるよう尽力しました。

結果として、トーリンの戦死をはじめとしたいくつもの犠牲はあったものの、山の下の王国と谷間の国は再建され、スマウグとゴブリンの多くは滅び、北方の安全と交通、諸種族の束帯は大いに回復されます。

これによってサウロンの当初の計画は頓挫したばかりでなく、後の指輪戦争においてモルドールが動員するはずだった兵力を減らし、戦禍が広がるのを大幅に食い止めることができました。

 

エレボール遠征の途上、ビルボは指にはめると姿を消すことができる「魔法の指輪」を手に入れましたが、ガンダルフは早くからそのことに気づき、一抹の不安を抱きます。

ビルボを問い詰めて彼が指輪を手に入れた本当の経緯を聞き出したガンダルフは、善良なビルボがこの件に限って嘘をついたことを不穏に思い、さらにいつまでも老いる様子がないビルボの外見にも不審を抱きます。

そこでゴクリに見張りをつけ、彼を捕まえて指輪の出処とその影響を確かめようとしました。

しかしゴクリは見張りの目を逃れて行方をくらましてしまいます。

そしてビルボの111歳の誕生日の夜、指輪が彼に邪悪な影響を与えているのを目の当たりにしたことで、それまでの漠然とした不安は切迫した恐怖に変わりました。

ひとまずビルボに指輪を手放させ、それをフロドに譲らせることに成功したガンダルフは、今度こそ指輪の正体を確かめるべく多年の調査に身を投じることになります。

友人のアラゴルン二世に「疑念」を打ち明けたガンダルフは、野伏にホビット庄の守りを任せる一方、アラゴルンと共にロヴァニオンからモルドールの境界に至るまでゴクリを捜索。

さらにゴンドールでイシルドゥアが書き残していた巻物を発見、指輪の判別法の知識を得ます。

時を同じくしてアラゴルンがゴクリを捕獲したことにより、ゴクリの口から指輪がイシルドゥアの没したあやめ野で発見されたいきさつも聞き出します。

そして大いなる年の3018年4月、ガンダルフは袋小路屋敷にフロドを再訪し、彼の指輪を火中に投じてその表面に暗黒語の銘が浮かび上がることを確認し、それがまぎれもないサウロンの一つの指輪に他ならないことを明らかにしました。

 

一つの指輪の危険性を知ったフロドがホビット庄から旅立つことを決意すると、ガンダルフはその従者としてサムを選び、隠密に裂け谷へ向かうよう忠告します。

そのままガンダルフはフロドに同行するつもりで袋小路屋敷に滞在していましたが、情報を集めるためブリー村まで足を伸ばしたガンダルフは、そこで茶色のラダガストに出会い、彼からナズグルが出現したことを聞きます。

そのためフロドに直ちに出発するよう警告する手紙をバーリマン・バタバーに預けると、自らは助力を申し出た白のサルマンに応じるため急遽アイゼンガルドへ向かいました。

しかしこれはサルマンの罠であり、中つ国の覇権を狙うサルマンに与することを拒絶したガンダルフは、サルマンによってオルサンクの塔の頂上に監禁されてしまいます。

ふた月後、飛来したグワイヒアに救出されたガンダルフは、ローハンで飛蔭を借り受けるとフロドを救うためホビット庄に急行。

既にナズグルがフロドの間近にまで迫っている絶望的な状況でしたが、アラゴルンがフロド達に合流したとの報せに希望を託し、自らはナズグルを撹乱するのに全力を上げます。

風見が丘でナズグルと交戦したガンダルフは、9人のうち4人を自分に引きつけることでフロド達から脅威を逸らすことに成功。

一足先に裂け谷に到達すると、エルロンドと共にブルイネンの水流を操って浅瀬でナズグルを押し流し、間一髪でフロドを救出しました。

エルロンドの会議で一つの指輪は滅びの罅裂に投げ込むべきことが決定され、フロドが指輪所持者に指名されると、ガンダルフは指輪の仲間の統率者としてあらためてフロドの旅の導き手となります。

しかしモリアにおいてガンダルフはただ一人バルログに立ち向かって諸共に奈落に落ちてしまいます。

ガンダルフは地の底から山の頂に至るまでバルログと戦い続けました。そして山頂の闘いにおいてとうとうバルログを滅ぼしましたが、彼自身も傷つき倒れました。

 

しかし使命を成し遂げるべく現世に送り返されると、黄泉路をくぐり抜けた彼は身内に宿る焔と遠方を見通す視力を与えられ、白衣を身に纏う白のガンダルフとして蘇生します。

山頂で息を吹き返したガンダルフは再びグワイヒアに見出されてロスローリエンに運ばれ、治療を受けた後、離散した指輪の仲間の後を追いました。

そしてファンゴルンの森でメリーとピピンが木の鬚に保護されたのを見届けると、同地でアラゴルン、レゴラス、ギムリに再会します。

ローハンでは、病に蝕まれたセオデンを癒やすと共に、正式に譲り渡された飛蔭の俊足を活かして散り散りになっていた友軍を呼び集め、角笛城の合戦を勝利に導きます。

合戦後はエントによって陥落したアイゼンガルドへ向かい、サルマンと最後の談判を行います。

ガンダルフはサルマンに投降と協力を呼びかけましたが、サルマンが拒絶したため、白の賢者としてサルマンの杖を折り、彼をイスタリと白の会議から追放しました。

そしてこの時偶然得られた黒い球がパランティーアであることに気づくと、その危険性を見抜き、ピピンを連れてミナス・ティリスへ向かいました。

ゴンドールでは、戦意が挫けたデネソール二世に代わり指揮を執ります。

ペレンノール野の合戦では魔王と対峙しましたが、狂気に陥ったデネソール二世がファラミアを巻き添えに焼身自殺を図ったため、ファラミアの救援を優先して都に留まります。

そして合戦後は黒の息に侵された人々を救うべく「癒しの手」を持つアラゴルンを城内に招き入れました。

 

ガンダルフは指輪所持者の任務達成にしか望みがないことを承知しており、黒門の戦いにおける西軍の捨て身の陽動攻撃を提案したのもガンダルフでした。

サウロンはガンダルフが多年に渡って自らの敵として働いてきたことを承知しており、指輪を手にすれば自らを打倒するに足る存在であることも認識していました。

そのため門前に現れたサウロンの口は特にガンダルフを責め苛むよう命を受けており、フロドから押収された装身具を携えていました。

しかしガンダルフは脅迫に怯むことなくサウロンの口の虚勢を見抜き、彼から装身具を奪い返します。

そして戦いの最中に指輪所持者の任務は達成され、一つの指輪は破壊されてサウロンは滅びます。

それを見届けたガンダルフは、大鷲たちを呼んでフロドとサムを滅びの山の崩落から救出しました。

 

コルマルレンの野において生き残った指輪の仲間は一堂に再会し、エレスサール王の戴冠式では、ガンダルフの手によって王冠が新王の頭に戴せられました。

その後ガンダルフは王をミンドルルイン山の聖所に導いて白の木の苗木を見出させ、自らの使命は終わり中つ国の行く末は人間の手に委ねられたことを告げます。

ガンダルフはフロドら旅人たちと共に、ゴンドールからローハン、裂け谷、ブリー村まで旅をしましたが、その先で四人と別れ、トム・ボンバディルに会いに行ったようです。

そして第三紀3021年(第三紀最後の年)9月29日、ガンダルフは灰色港でフロド達と最後の再会をします。

そして指輪所持者であるフロドとビルボ、他の指輪の守護者であるエルロンドとガラドリエルと共に、ガンダルフもまた船に乗って西方へと去って行きました。

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