534年 トゥオルとイドリルが西方へと航海して去った後もエアレンディルはシリオンの港に留まったが、その後を追いたいという望みを強く抱くようになった。
さらに彼はアマンに到達してヴァラールに対し、中つ国のエルフと人間に対する助力と憐れみを請うという目的をも達成したいと願う。
そこでエアレンディルはキーアダンの助けを借りてニンブレシルの樺からヴィンギロトという船を作り、三人の水夫(ファラサール、エレルロント、アイランディア)と共に西方への航海に出発する。
だがその航海はヴァリノール隠しによって失敗し、彼らは失望して中つ国に戻ろうとする。
538年 フェアノールの息子たちは再び誓言に突き動かされてシリオンの港を襲撃し、三度目の同族殺害を起こす。
アムロドとアムラスは戦死し、エルウィングはシルマリルを抱えて海に身を投げた。エルロスとエルロンドは捕らわれるが、マグロールに養育される。
マグロールは誓言の重荷に倦み疲れており、自らの襲撃によって母エルウィングを失ったエルロンドとエルロスの兄弟を不憫に思って養育した。
両者の間には、ほとんど考えられないことでありながら、愛情が育っていったという。
海に身を投げたエルウィングはウルモの力によって救われ、白い鳥の姿となって、シルマリルを持ったままエアレンディルの船であるヴィンギロトに辿り着き、元の姿に戻った。
542年 エアレンディルとエルウィングはシルマリルを掲げ、改めて西方への航海を再開し、シルマリルの力でヴァリノール隠しを通り抜け、その力に守られて遂にアマンに到達する。
エアレンディルはアマンに上陸して、ヴァラールに中つ国のエルフと人間のため、哀れみと助力を請うた。
エアレンディルがヴァラールの許に行っている間に、エルウィングはアルクウァロンデでテレリ(ファルマリ)と出会い、彼らにモルゴスによって苦しめられているベレリアンドの民のことを話した。彼女の言葉にテレリは深く同情した。
エアレンディルの願いは聞き入れられたが、彼が再び中つ国に戻ることは許されなかった。また半エルフである彼と妻のエルウィング、そして二人の息子であるエルロンドとエルロス兄弟は、エルフと人間いずれの種族に属するかの選択を迫られた。
エアレンディルは本心では父方の人間寄りだったが、選択をエルウィングに委ね、エルフの運命を選んだ彼女に自分も倣った。
ヴィンギロトは天空を航行する船となり、額にシルマリルを結びつけたエアレンディルはそれに乗って空の彼方、はるか虚空へまでも航海することになる。
シルマリルの光は、中つ国のエルフや人間への希望の星として空に輝くようになった。
中つ国では、ヴィンギロトが虚空に向かうときと虚空から帰ってくるとき、つまり明け方と宵の時間に空に見ることができる。
我々の世界で「明けの明星」「宵の明星」として知られているのが、エアレンディルの星である。
エルウィングは虚空の船旅には耐えられるかわからなかったため、同行することはできなかった。その代わりアマンの北、大海の縁に、エルウィングのために白い塔が建てられた。
そこには時々、地上のあらゆる鳥たちが集まったという。エルウィングは鳥たちの言葉を学び、飛翔の術を教えてもらった。
エアレンディルの船が虚空から戻ってくる時、よく彼を迎えるために飛び立って行ったという。
545年 怒りの戦い。エアレンディルの嘆願に応じたヴァラールの軍勢がベレリアンドに上陸。
ヴァラールの軍勢はマイアのエオンウェを総大将とし、ヴァンヤール族、フィナルフィンに率いられたアマンのノルドール族などがこれに同行した。
アルクウァロンデのテレリ族(ファルマリ)は同族殺害の記憶から進んで戦いに同行することはなく、軍勢を運ぶ船を操る水夫たちを差し向けたのみで上陸しなかった。
中つ国のエルフは戦いに参加しなかった。人間はエダイン三家の生き残りがヴァラールの側について戦ったのみで、他の大多数の人間はモルゴスの側についた。
モルゴスは全兵力を動員してこれを迎え撃ったが利あらず、オークもバルログも少数を残して殲滅された。
モルゴスは最後の反撃として史上最強の黒竜アンカラゴンを筆頭とする有翼の龍族を繰り出し、これはヴァラールの軍勢を一時押し戻すほどの猛威を振るったが、そこにヴィンギロトに乗ったエアレンディルとソロンドールが率いる大鳥たちが到来。
両陣営は一昼夜空中戦を繰り広げ、日の出前にエアレンディルがアンカラゴンを討ち取ったことで勝敗が決した。アンカラゴンの落下によってサンゴロドリムの塔は毀たれた。
アングバンドは徹底的に破壊され、地の底に逃げていたモルゴスも捕らえられて再びアンガイノールの鎖で縛られた。
鉄の冠からは二個のシルマリルが回収され、冠は打ち直されてモルゴスの首輪になった。こうしてモルゴスの王国は滅び、大勢の奴隷が地下の牢獄から解放された。
戦いのあまりの激しさのためにベレリアンドは引き裂かれ、リンドンと、トル・フイン、ヒムリング、トル・モルウェンが島として残ったほかはすべて大海の下に没してしまった。
587年 エオンウェはシルマリルに対する彼らの権利は度重なる同族殺害で失効したと述べ、ヴァリノールに戻ってヴァラールの裁きを受けるようマイズロスとマグロールに命じる。
二人とも誓言に倦み疲れ、マグロールはエオンウェの命令に従うことを望んだものの、マイズロスはそれでも誓言の成就を試みることを主張する。
マイズロスとマグロールは夜半にヴァリノールの軍勢の陣営を襲って見張りを殺し、保管されていたシルマリルを奪って逃げ去る。
だがエオンウェの言葉通り、シルマリルはもはや兄弟を正当な持ち主とは認めず、その身を焼いた。
これを悟ったマイズロスは苦悶と絶望のあまりシルマリルを抱いたまま大地の火の割れ目に身を投じて死んだ。
マグロールはシルマリルを海中に投じた後、海辺をさまよいながら苦しみと悔恨の歌を歌い続け、二度とエルダールの間には戻らなかったという。
590年 大海の岸辺では船が建造され、エルフ達がアマンへ帰っていった。中つ国のエルフの多くもアマンへ渡り、トル・エレッセアに定住したが、中つ国を去り難く留まる者もいた。
ヴァラールの側に立って戦った人間であるエダインには、報償としてヌーメノールの島が与えられた。
モルゴスは夜の扉から虚空へ放逐された。現存する目に見える姿では二度と戻ってくることはないという。
ヴィンギロトで天空を航行するエアレンディル(明星)がその見張りに立った。
だがモルゴスの蒔いた邪悪な種子は中つ国に残り続けていつまでも果実をつけ、彼の意志は依然として召使達を支配した。
バルログやオーク、龍といった堕落した怪物たちは一部が生き残り、後世に禍根を残した。
最強の召使サウロンはモルゴスの跡を継いで冥王となり、再び中つ国に暗闇を広げることになる。
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