3019年3月16日 アラゴルン、ガンダルフ、エオメル、イムラヒルといった西軍の指導者達の間で最終戦略会議が行われる。
武力によってサウロンを打倒することはできず、望みは指輪所持者の任務達成にしかないと看破するガンダルフは、指輪所持者からサウロンの注意を逸らし続けるためには自分達がおとりとなり、黒門に捨て身の陽動攻撃を仕掛けるしかないと提案。
西軍の大将たちはこの提案に同意する。ミナス・ティリスに残る守備隊はアングボール率いる辺境の諸侯国の援軍4000人で増強され、さらにエルフヘルム率いるローハン軍の主力3000騎がアノリアンから来る敵を西街道で待ち伏せするために残された。
フロドたちは敵の野営地越しに滅びの山を望む。
3019年3月17日 谷間の国の合戦ではエレボールの門の前でブランドは討死し、その亡骸を守ってダイン二世も討死する。
人間とドワーフはエレボール山中に籠城して東夷への抵抗を続けた。
モルドールではオークの守備隊長、シャグラトがフロドから奪ったミスリルの胴着やエルフのマント、塚山出土の剣などのフロドの装身具をバラド=ドゥーアに届けた。
3019年3月18日 西軍の大将たちは割ける限りの総勢7000名を連れてミナス・ティリスを出立する。
アラゴルン二世が諸侯国の兵からなる2000人を、イムラヒルがドル・アムロスおよびミナス・ティリスの兵からなる3500人を、エオメルが馬を失ったロヒアリムを500人を組み、エオメル自身は麾下の500騎の騎兵を率い、それとは別にエルロンドの息子たちと北方のドゥーネダイン(野伏)、ドル・アムロスの騎士たちが加わった500騎の騎兵があった。
つまり徒歩の兵が6000人で騎馬の兵が1000騎だが、これは行路の足場の悪さを考慮してのことだった。
ガンダルフ、レゴラス、ギムリ、ピピン、ベレゴンドらもそれに加わったが、メリーは黒の息の負傷が癒えたばかりだったため、ミナス・ティリスに残された。
エオウィンも療病院に留まっていたが、彼女には、依然として戦いと死を願う心があり、希望を持てないでいた。
そんな中、エオウィンは同じく黒の息に冒されてアラゴルンに癒されていたファラミアと知り合って愛されるようになる。
フロドとサムは乾き、飢え、疲れなどに苦しみながらモルドールの地を進んでいく。その中でウドゥンへ向かうオークの隊列に見つかり隊列の中に組み込まれてしまうが、変装のお陰で正体はばれずにすんだ。
サウロンの下へはホビットの間者が侵入したとの報告も上がってきたが、熟考の末に西軍を撃滅するのに全力を挙げることを決意する。
サウロンの望みは、他者が一つの指輪に込められた力を完全に使いこなせるようになるには時間を要するということであり、そのためイシルドゥアの世継が傲慢にもわずかな手勢で拙速な攻撃を仕掛けてきた機会を見逃すわけにはいかなかった。
サウロンは彼らを黒門までおびき寄せて大兵力によって一網打尽にし、指輪を奪い返す心づもりであった。
3019年3月19日 西軍は前衛部隊がモルグル谷に達してモルグルドゥイン川の橋を落とすとともに、死の原に火を放つ。
さらに十字路には東のモルグル峠や南からの攻撃に備えて、土地勘のある射手からなる強力な守備隊を残した。
フロドとサムはオークの隊列が合流したときの混乱で、逃げ出すことに成功する。
3019年3月21日 西軍はイシリアンで、オークと東夷の強力な分遣隊にはじめて攻撃されたが、ヘンネス・アンヌーンのマブルングの偵察隊から警告を受けていたため首尾よく撃退した。
しかしこれは、西軍を黒門まで誘導するサウロンの陽動だった。
3019年3月22日 フロドとサムは本道を南に去り、ゴルゴロス高原を横断し、滅びの山に向かう。
ロスローリエンはドル・グルドゥアから三度目の攻撃を受けるが、これも撃退する。
3019年3月23日 西軍はイシリアンを去り、モランノンの荒廃地に達したが、目に入らないながらも絶えず西軍の上を跳梁していたナズグールと恐るべき獣の恐怖や、モルドールの伝承の恐ろしさを前に、意気をくじかれる兵が続出する。
ここでアラゴルン二世は弱気な者達に去ることを許したが、可能ならカイア・アンドロスを奪取するよう彼らに命じた。この段階で総勢は6000名に満たなくなっていた。
3019年3月24日 フロドとサムは滅びの山の麓に最後の旅をする。
だが過酷な旅路による心身の疲弊、山に近づくにつれ力と重さを増す指輪の重圧、またその道はバラド=ドゥーアに坐するサウロンに近づく道でもあったため、それが投射する恐るべき脅威、それらはフロドの意志の力を刻一刻と消耗させていった。
それでも時に這いながら、時にサムがフロドを背負いながら進んでいった。
西軍は荒廃地で最後の野営をした夜、おびただしい数のおぼろな影と狼の吠え声に取り囲まれたが、朝になるとそれらは消え失せる。
3019年3月25日 西軍は黒門に達した。西軍は戦いに先立ち、黒門の北にある二つの小高い丘(燃えかすの山)に陣取った上で軍使を立て、サウロンに宣戦布告する。
西軍の軍使団はガンダルフを長として、アラゴルン二世、エルロンドの息子たち、イムラヒル、エオメルら大将たちが同行し、さらにレゴラス、ギムリ、ピピンが加わった。
これでサウロンを敵とする全ての自由の民の種族から最低一人は証人が出ることになった。
西軍の呼び出しに応じて黒門から現れたモルドールの軍使団は、サウロンの口を先頭にその護衛兵の一隊が続いたのみで、黒地に赤目のサウロンの旗印を一つ携えていた。
姿を現したサウロンの口は西軍の大将たちを侮辱するとともに、キリス・ウンゴルの塔でフロド・バギンズから押収された塚山出土の剣、ロスローリエンのマントとブローチ、ミスリルの胴着といった装身具を示して彼らを脅迫する。
口は捕虜のホビットへの拷問をちらつかせて「ゴンドールとその同盟者は二度とサウロンを攻撃しないと誓言して直ちに大河以西に撤退すること」「大河以東の地は永久にサウロンの直轄地となること」「大河以西の霧ふり山脈およびローハン谷に至るまでの地はモルドールの属領とし、住民の自治は認めるが武装を禁ずること」「アイゼンガルドはサウロンが領有した上で彼の副官(サウロンの口)の居城とし、その再建に手を貸すこと」といったサウロンからの条件を伝えた。
しかしガンダルフは、口のわずかな反応からホビットが実は捕らえられていない可能性を見抜いて条件を拒否。口から装身具を奪い返した。
サウロンの口は西軍の大将たちの怒気に圧されて反転遁走したが、その途中に部下たちが取り決められていた合図の角笛を吹き鳴らし、黒門は開け放たれて戦いが開始された。
予期されていたように交渉が決裂すると、サウロンは開かれた黒門からだけでなく、歯の塔の東のエレド・リスイ側に潜ませていた東夷の軍勢や、黒門の両側の丘陵に潜ませていたオークを解き放つ。
その数は西軍の10倍以上はあり、さらにサウロンの軍勢を弱らせる太陽は、モルドールの煙霧に覆われて、光はほとんど地上に届かなかった。
燃えかすの山の二つの丘にはアルウェンの旗印、ローハンの旗、ドル・アムロスの旗が美しくも絶望的に掲げられ、それぞれの丘は完全にモルドール軍に包囲される。
アラゴルンとガンダルフは丘のひとつに立ち、東側の丘にはドゥーネダイン、エルロンドの息子たち、西側の丘にはイムラヒル、ミナス・ティリス、ドル・アムロスの兵達が、一番攻撃が激しいであろう黒門の方面に立っていた。
イムラヒルの陣営の最前線近くには、覚悟を決めたピピンも塚山出土の剣を握りしめ、ベレゴンドと共に立っていた。
やがて、恐るべき獣に乗ったナズグールが空を跳梁する中、まずモルドール軍のオークが矢を西軍に浴びせかけ、それからゴルゴロスから来た山トロルが西軍の最前線に襲いかかった。
この時ベレゴンドは攻撃を盾と兜で防いだものの、その力に圧倒され気を失って倒れる。
ベレゴンドを倒したトロルが、彼の喉を噛み切ろうと掴み上げたところ、ピピンはそのトロルに対して塚山出土の剣を突き刺す。
剣に込められた力もあって刃はトロルの急所にまで達したが、ピピンは自分が倒したトロルの下敷きになってしまう。
その瞬間ピピンは「鷲たちが来るぞう!」という叫び声を聞いたが、意識が朦朧としていたピピンは、これは五軍の合戦の時の話だと混同して、そのまま気を失ってしまう(戦いが終わった後、ピピンはギムリに発見された)
だが実際に大鷲は戦場に姿を現し、恐るべき獣に乗ったナズグールに襲いかかった。
この時、フロドとサムは滅びの山を臨むところまでやってきたが、ふたりを裏切ったゴクリが襲ってきた。
サムが斬りつけてゴクリの相手をする間に、フロドは滅びの罅裂があるサンマス・ナウアへと向かっていく。
サムはゴクリを殺したい衝動に駆られたがそれを抑えてゴクリを追い払うと、すぐにフロドのあとを追いかける。
だがゴクリも、サムに追い払われた後またふたりのあとを追っていた。
サムは、とうとう滅びの罅裂に到達したフロドのところへとやってきた。
だがここでフロドは一つの指輪の誘惑に屈し、指輪を自分のものと宣言して自分の指にはめた。
さらに次の瞬間、サムは背後に迫ってきていたゴクリによって足を取られ倒される。
この瞬間サウロンは一つの指輪の所在、西軍の目論みに気が付いて怒りと恐怖に駆られ、全ての意思を滅びの山に向けて、ナズグールを急行させる。
その瞬間、他のモルドールの軍勢は、自分たちを駆り立てていたサウロンの意思が消えたため、動揺する。敵の狼狽を見取った西軍の兵は反撃に転じるが、ガンダルフは待つように呼ばわった。
起き上がったサムは、指輪の力で透明になったフロドと、ゴクリがもみ合っているのを見た。
そしてゴクリは何かを口元に持っていって、透明になっていた、指輪をつけていたフロドの指を食いちぎる。
こうして指輪を自分のものにしたゴクリは狂喜して飛び跳ねるが、そのせいで足を滑らせ、指輪もろとも滅びの罅裂へと落ちていった。
そして滅びの山は鳴動して火を噴き出し、駆けつけてきたナズグルを炎の中に消し去る。
大地は揺れ動き、黒門と歯の塔そしてバラド=ドゥーアは崩れ落ち、サウロンは消滅した。
こうして、モルドールの軍勢を動かしていたサウロンの意思と存在が消滅した結果、オークやトロル、その他の獣など、サウロンの意思が吹き込まれた生物は正気を失い、自害するか希望もなく逃げ去った。
サウロンの同盟軍だった東夷やハラドリムなどのうち、最も大胆不敵で西方世界を憎んでいた者達は、最後の抵抗をするために集結したが、ほとんどは東へ逃げ去り、西軍に降伏する者もいた。
ガンダルフは、軍の指揮をアラゴルンに任せると、自分はグワイヒアを呼び、滅びの山にいるはずのフロドとサムを救出するための助力を要請。グワイヒアはガンダルフを滅びの山へと連れて行く。
一方の滅びの山では、指輪を失ったフロドは、全ての望みも喪失して抜け殻のようになっていたが、まだ希望を失っていなかったサムがサンマス・ナウアからフロドを連れ出す。
しかし山腹に出たものの、噴火した滅びの山の裂け目や溶岩に逃げ道をふさがれ、やがて二人は倒れてしまう。
正気を取り戻したフロドはサムと共に、溶岩に取り巻かれて逃げ場がないことを悟る。
しかし意識を失った瞬間、彼らを探しに来たガンダルフの乗るグワイヒアら大鷲が飛来し、二人は救われた。
そして指輪所持者の使命が達成されたこの日、エオウィンはファラミアの愛を受け入れ、戦い以外にも望みを持てるようになって、心も癒された。
コメント